テーマ講義 環境の世紀VII

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2000年度夏学期に開講した「テーマ講義 環境の世紀VII」に関する総合サイトです。

活動紹介

今年のテーマは、「持続的社会の構築に向けて」

講義の様子 東京大学教養学部の授業「環境の世紀」は、教官のもとで学生が企画や運営のお手伝いをするという一風変わった授業である。毎回、環境問題に関わる第一線の研究者や実務家が出講し、研究のアプローチや現場の様子などを語る。初めから特定のアプローチから入ってしまいがちな他の環境に関する授業とは違い、まずは分野横断的に学び、環境問題の全体像を鳥瞰しようというのが狙いだ。

 今年は、丸山真人先生、後藤則行先生のご指導のもとに、2年生を中心とするメンバーが企画のお手伝いをしてきた。昨年秋から半年あまり、今年の講義のコンセプトについて話を重ねた上で、出講される教官の候補を絞り、交渉、打ち合わせなどを経て、ようやく夏学期に開講される講義はまさに汗と涙の結晶である。

講義をつなぐ視点

 第一回の「環境の世紀」が開講された当時、環境問題を主題に扱った授業はあまりなかったが、時代は変化し猫も杓子も環境という社会状況になった。現在では、ただ単に環境問題を主題として扱っているだけの授業では独自色を出せなくなっており、「環境の世紀」は開講当初とは違う局面にあると言える。

 今年のプロジェクトの責任者である向江君(理科一類二年)によると、「今回の講義の一番の売りは、講義間のつながりを分かりやすくなるような試みをしたことです。」とのこと。サブタイトルに「持続的社会の構築に向けて」をつけ、それぞれの講義を持続的社会というひとつのビジョンのもとに整理してみようという訳だ。また講義日程の中ほどには、中間総括の回を設け、それまでの講義を振り返り、キーワードによる整理を行った。準備段階では環境三四郎メンバーにより「持続的社会」のあり方についての議論を重ね、それをもとに出講教官との打ち合わせに臨んだ。先生方の協力によりも各講義の中には随所に「持続的社会」を構成するキーワードがちりばめられ、全体像を掴む手がかりとなっている。また「今年の特徴のひとつは、解を提示することよりも問題を発見し考える方法を提示するような講義が多いことですね。」というのは、プロジェクト副責任者の浦久保君(理科二類二年)。単に各回でそれぞれのアプローチを紹介していくだけではなく、研究自体を相対化するような視点[佐藤仁先生]や環境倫理思想の見取り図[鬼頭秀一先生]などのメタレベルの研究も紹介された。

ホームページで双方向授業を模索

 今年からホームページの開設された。教官や講義の紹介の他に、終了した講義の内容と質疑などが掲載されたり、電子掲示板には書き込みができるようになっている。掲示板には、一般の学生からの質問やそれに対する教官の返答なども掲載され、双方向のコミュニケーションが可能になっている。残念ながら、活発に議論がなされているというところまではいっていないようだが、まずは初めの第一歩。受講した学生、教官、あるいは授業に参加できない一般の人も含めた双方向授業の可能性に期待したい。

環境三四郎調査発表「キャンパスから考える環境問題」

 6月16日(金)東大駒場キャンパスの教室で、環境三四郎による調査研究の発表が行われた。「環境の世紀」には、数年前から学生による調査発表の回が設けられている。学生が学生の視点から見た問題や取り組みを紹介してはどうかという先生の発案によるものだ。学生ということもあり慣れない部分も見られるが、受講生にとってはほぼ同年代の学生が調査し問題に取り組む姿を見て、刺激を受ける人も多いようだ。

 今回の発表内容は、「駒場キャンパスにおける廃棄物問題について」というタイトルで、学内の廃棄物処理に携わる人々へのインタビューや東大本郷キャンパスとの比較を通じて、大学のごみ処理のあり方の問題点が分析されている。

 環境三四郎では、これまでも度々学内の廃棄物処理やリサイクルなどを調査してきた。今まで扱ってきたのが紙のリサイクルや東京のPETボトルリサイクルというように、特定のものに着目し、現状・問題点・解決策を広く扱ってきたのに対し、今回はキャンパスを取り巻く法律や制度に着目しながらより現状をより把握することにこだわった点が特徴と言える。

 大学は外から見ればひとつの事業所という扱いだが、その内部は複雑な構造になっている。ごみ処理は、学部ルートと生協ルートの二種類があり、意思決定に関しては、教授により構成される環境委員会、事務方の学部経理課、運搬業者・清掃業者、生協などが複数の主体が関与している。発表では、こうした多主体に及ぶ問題にも関わらず、最終的な決定を事務がほとんど担っていることやごみ処理に関する計画と実施において調査に基づくフィードバックが為されていないことが指摘された。改善策として挙げられたのは、システム設計に関与する主体を増やしていくこととデータに基づいた計画的取り組みをしていくことの2つである。比較対象として紹介された本郷キャンパスでは、専門の研究者による調査・分析が為され、前年との比較を通じてごみの量や分別率が改善したかどうかがチェックされ、それが対策にフィードバックされているとのことで、2つの改善策も本郷キャンパスを意識しているようだ。

 発表後の学生の感想としては、廃棄物問題に関する基礎知識も含め駒場キャンパスの問題の現状が分かりよかったという好意的なものが多かったようだ。身近だけれど、普段あまり考えたことのない話題に様々な発見があったことだろう。

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