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環境を正しく理解する
―リサイクルとLCA

6月23日 安井至


安井研EcoDBに本日の使用資料あり

1 ライフサイクルアセスメントの基本思想

保全対象物
地球全体 温度、オゾン層
地球上の生態系全体 多様性維持
広域生態系 森林保護
ある生物種 希少生物、ヒト
ある個体 個人、個体
その他 景観
究極の持続可能性
太陽 → 製品の製造と利用(循環)→ 宇宙へ廃熱
再生可能資源―すべて太陽エネルギーの変形
  • 森林資源
  • その他の植物
  • 漁業資源
  • 放牧
  • 水力発電
  • 太陽光発電
  • 風力発電
  • 波力発電
  • 自然農業
など―再生量の範囲内で使用すれば
安井至



2 地球インパクト評価

 評価の方法論としてのライフサイクルアセスメント=LCA

LCAの定義
・・・ある製品やサービスの地球インパクト、すなわち環境への負荷、資源・エネルギーの消費量などによる総合的評価〜地球から人への矢印を評価

2−1 LCAの歴史

1969年
 コカコーラボトルがビンとアルミ缶の比較のため行ったのが始まり(当初の目的―エネルギー消費分析)
 ↓
1984年
 エコバランス (スイス・BUWAL)

2−2 LCAが注目されている理由

ISO14000による国際規格化(環境管理監査の規格・14040にLCAの規格を含む)や、これまでのリスクゼロ思想の行き詰まり・トレードオフの認識の高まりから、環境負荷の定量的表現法の必要性

飲料容器のLCA

2−3 LCAの方法論

インベントリ分析
定量的負荷を表の形にする。
インパクト分析
表のデータを指標化する。
改良分析
製品などを改良した際の効果。

2−3LCAの例

飲料容器のLCA
左図
情報伝達とCO2排出量 例:1000文字の伝達
週に2回くらいしか使わないFAXを使用したときに消費エネルギー最大



3 ガラスのLCAとリサイクル

ガラスのリサイクルの現状
  • ビール瓶はリターナブル(リユース)〜100本中99本戻る(そのうち3本棄てられる)
  • その他のガラス瓶:カレットリサイクル=ガラスの材料レベルのリサイクル
ガラスのLCA的話題
ミツカンのリターナブルをワンウェイに
ミツカンのワンウェイ化
ミツカン酢の瓶はリターナブルだが、実際は1.1回しか回っていない。しかし、リターナブル瓶はワンウェイに比べ20%以上重いのでゴミが増えている。そこで、最低でも3回は回らないと回収、洗浄の負荷が増えるため、結局無色瓶のワンウェイに変更
リターナブル容器の成立条件
複数本の容器が消費サイトに存在必要があるが、お酢の場合家庭内には1本で、業務用は全く異なった容器を使っている。よって、リターナブルは成立しにくい。
歴史的には、ビール、牛乳、ミネラルウォータぐらい。ミネラルウォータならPETリターナブルもある。
 →なによりも、流通業界がイニシアティブを(回収して保存する場所の確保)



4 循環型社会におけるリサイクル

平成12年5月 循環型社会形成促進基本法

4−1 どんな法律があるか

容器包装リサイクル法
→変わったのはほんの一部
現在:ガラス、ペット
   ↓
2000年4月から:すべての容器包装/自治体が回収、事業者が商品化/事業者が指定法人に課徴金を払っている
家電リサイクル法
→悪法? 2001年4月から消費者が費用負担、事業者が商品化
食品、建築廃材
一般的リサイクル

4−2 なぜリサイクルするか

  • かつて− 経済的なメリットの追求(モノはすべて貴重品)
         資源の価値 > 人件費
  • 現時点− 法律で決められたからリサイクルをするというのが現状

4−3 なぜ法律ができるか

  • 最終処分地の不足
  • 地球レベルの資源・エネルギー節約

4−4 循環型社会の標語 3R

Reduce・Reuse・Recycle・・・Recycleと、他の2種は根本的に異なる

ReduceとReuseの組み合わせ:ある物質を3回使えば、入力も出力も三分の一になる。
  ※ただし、エネルギー効率の悪い製品は別途考慮する必要あり

4−5 循環型経済社会阻害要因

  • フロー型経済への慣れ=循環型は面倒!
  • 自由主義・民主主義への慣れ
  • 公的社会システムへの過度の依存
  • 福祉社会への誤解・ 不公平性への鈍感さ

4−5 もう一つの環境の原則

拡大製造者責任
製品の責任をライフサイクル全体に拡大して、そのコストを製造者が負う(廃棄・リサイクルに余分な費用がかかる場合には、製品価格にそれを含める)
トータルリスクが価格に反映される、価格とベネフィットのバランスで市場が自由に決める

4−6 地球の希少性を考慮した経済学

具体的な誘導策
近未来

  • 容器包装リサイクル法の改正
  • せめて、家電リサイクル法なみにデポジット制の導入
  • 共通リターナブル容器
未来
  • 炭素税
  • エネルギー税
  • バージン資源税
  • 埋立て税



5 環境リスクの総合評価

問題
 ダイオキシン1μgの発生を抑制するために、二酸化炭素1トンを放出することは正しいか?

5−1 環境の相場観の重要性

 一般社会における「既成事実化」された環境負荷と真の環境負荷は別物

現時点における環境負荷は最悪か?
 ↓
No! といえるし、 Yes!とも言える。

身近&現時点なら、 No!
遠距離&未来なら、 Yes!

有りそうな反論:環境ホルモン問題は将来問題?

→恐らく違うだろう(不確実性あり)継世代的影響は無い(胎児まで)決定的なダメージであれば、流産する。現代社会では、すでに、感染症による自然淘汰のメカニズムを放棄していることに比較すれば、影響は小さい

自分からの半径 環境問題
1m感染症
10m室内環境
1km地域大気環境
100km飲料水の質、食糧
1000km越境移動、食糧
2000km開発、森林破壊、食糧
6000km資源枯渇
6500km温暖化、オゾン層破壊

5−2 環境リスクの取扱い

リサイクルによるリスクの増大・・・トレードオフの良い例

ペットボトルがなぜ再利用されないか・・・農薬などの容器として使用されるかもしれず、かび毒はかなり毒性が強いものもある

食品リサイクルのリスク例として、 ベルギーのダイオキシン騒ぎ(リサイクルされる食用油にPCBの混入)があった。これは、その他の製品の場合でも起こりうるもので、信頼性がどこまで確保できるかが問題

5−3 環境観の変更の必要性

日本の超清潔、超健康主義は地球環境の敵である

リスクゼロ 生命の価値無限 自然の価値無限 予防原則
          ↓
トータルリスクミニマム バランス価値観 トレードオフ 予測原則

講義の様子
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