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 矢坂先生「農業と自然・社会環境の関係」
 ゼミ生の発表「山形県長井市レインボープランの理念と課題
 授業の補足 2002年12月12日 「地域循環型農業」研究会より
  現在地竹田義一「循環型農業で地域を変える─台所と農業をつなぐながい計画(レインボープラン)─」
   矢坂雅充「地域循環型農業の基本的論点」
   総合討論





循環型農業で地域を変える─台所と農業をつなぐながい計画(レインボープラン)─

竹田義一
2002年12月12日 「地域循環型農業」研究会 より

目次

0.紹介
1.はじめに
2.レインボープランシステムの紹介
3.地域循環システムが必要とされたわけ
4.レインボープランの持つ理念
5.レインボープランの過去6年の成果
6.レインボープランの課題
7.その解決策
8.まとめ

0.紹介

柳澤

 それでは、早速ですが、竹田さんにお話しいただきます。  竹田さんは、このレインボープランにつきましては、60年代からずっと重要なスタッフとして参画されておりますし、また、今お話がありましたように、レインボープラン推進協議会の中の4つの専門部会の1つであります生産流通委員会の委員長をしておられます。ご本人みずからも農業をやっていらっしゃって、いろいろと参考になるお話が聞けるのではないかと思います。  私のご紹介の足らないところは、ご本人から補っていただくことにしまして、竹田さん、よろしくお願いしたいと思います。

竹田(レインボープラン推進協議会生産流通委員会委員長)

 皆様、こんにちは。  ただいまご紹介いただきました竹田でございます。ご紹介にありましたとおり百姓でございまして、百姓のいいおやじがこうした東京という中枢の都会に来て、しかも各界でご活躍の皆様方の前でお話しさせていただくというすばらしい機会をお与えいただきましたことをまずもって感謝申し上げます。ありがとうございます。

1.はじめに

 きょうは、地域循環型農業──長井市のレインボープランを紹介させていただくわけですが、このレインボープランそのものが皆様方の研究テーマにどう沿うことができるのか、微力ながら全力をふり絞って、このレインボープランの特徴をお伝えしようと覚悟してまいりました。

(1)長井市とはどんなまちか

 まず長井市というところをご紹介申し上げますが、大部分の方が、長井市とは一体どこかというぐらい山形でも小さな町です。
 人口が3万2,000でありまして、世帯数が9,300。農地面積が2,900ha、その大部分が水田の単作地域です。ほかに果樹や畑作もありますが、金額ベースから見ても、まだまだコメが主体であるということです。
 農家戸数が1,900戸で、そのうち専業農家戸数は100戸です。率にしまして5.4%という農村環境の状況がまずあります。
 簡単ですが、長井市というのはそのような町であるということをお話しさせていただいて、昨今の農村あるいは農民がどういう立場に置かれているかという農村現場からの意見を少し述べさせていただきます。

(2)農民が背負っている世界

 レジュメ(掲載略)にもありますとおり、農民が背負っている世界──その「世界」という2文字が曲者でありまして、文字どおりグローバル化の中で日本農業の生産現場がすごく疲弊していると言っても過言ではありません。農産物の自給率が40%と言われているわけですが、穀物ベースでははるかに低い30%を割ってしまったという、このような自給の現状、つまり海外から農産物がなだれ込んできているという状況の中で、価格競争に敗北した産地はどんどん手を引いていく。ましてや、それに加わる要因として農村の従事者が高齢化しているために、生産能力そのものが非常に減退しています。都会の皆様がどれほど現状を把握しておられるかわかりませんが、生産現場はものすごい勢いで衰弱しているということは間違いありません。
 それから、昨今の報道でご承知かと思うのですが、食品を取り巻くスキャンダルが余りにも多過ぎる。そのことで食あるいは食材に対する消費者の不安感が波のように押し寄せているという問題があります。加えて今年は、山形発のニュースとして、無登録農薬の問題が大々的に報道されました。そのことによる経済被害はとてつもない金額になっているはずです。つい先ごろ農水省で発表されました無登録農薬を散布したことによって廃棄された農産物の金額は、日本全国で16億円という数字が出されました。そのうち山形では2億5,000万円〜3億円という数字が出ていますけれども、それは直接農薬を散布した作物もしくはそれが隣地に飛散した作物、それだけの金額です。このニュースによって風評被害がもたらした価格の暴落、この経済損失のほうがはるかに多いわけです。(価格相場の下落)×(生産量)を計算すれば、これは勝手な私の推測ですけれども、16億円の何百倍という金額になっても不思議はない数字のはずです。これは農業の生産現場ですらそれぐらいです。それから先の流通、小売あるいは宅配業者までこの無登録農薬の問題が経済に及ぼした影響というのははかり知れないという問題がここ近い間では出されております。
 そういう世界で、これから先の日本の農業、ひいては私のこれからの農業経営をどう構築していくかという切羽詰まった思いがあるわけです。

2.レインボープランシステムの紹介

 それでは、私たちがつくり上げてきた長井市という自治体単位での地域循環型農業のシステムを紹介すると同時に、またそれに至った背景や理念、そして今までの成果、抱えている課題、そして展望へというふうな順序でお話しさせていただきたいと思います。

(1)スライドでの紹介

 それでは、言葉だけよりも、映像で見ていただくほうがご理解いただけるかと思いますので、スライドでレインボープランそのものをご紹介したいと思います。あわせて、お手元に「これが地域内循環だ」という表題のカラー刷りのパンフレット(掲載略)が配られていると思いますが、実際の生の市民の映像をごらんいただきたいと思います(スライドの掲載は省略)。

・山形県全図

 これが山形県の全地図(8ページ参照)です。ごらんのとおり人の横顔によく似ているわけで、長井市はどこに存在するかといいますと、ここが長井市です。人の横顔にたとえますと、ちょうど長井市はえくぼの位置にあるということで、「長井市は山形のえくぼ」という勝手な呼び方をさせていただいております。

・空からの長井市

 これが長井市の全景(掲載略)ですが、画面上部が朝日連峰の南端部分になります。そこから斜めに横切っている川が置賜野川という清流が流れておりまして、画面中央から下が市街地、その朝日連峰との間に農地が広がっているという風景です。

・最上川の流れ

 画面下が最上川、そして先ほどの置賜野川という川、それと白川という、3つの1級河川が長井で合流して最上川という川になっていきます。

・散居村

 これは農村の風景ですが、今もって散居村の形態を残しております。この散居村に植栽されている樹木は杉で、冬の季節風から守るための先人の知恵です。そして住宅が密集していないために、火災の被害が広がらない効果があると言われております。

・国指定天然記念物「久保の桜」

 長井市には、樹齢1,200年の「久保の桜」という桜があります。長井周辺にはこういった古木が大変多く存在しておりまして、現在は隣の南陽市、白鷹町とともに「置賜桜回廊」という名称で観光にも力が入れられています。

・花開くアヤメ公園

 これは長井の市の花にもなっておりますハナショウブです。長井では「アヤメ」と呼んでおりまして、これも観光の1つのテーマになっておりますが、現在、市で管理しております。この由来は民間人が自費で切り開いたところから始まったと言われております。

・つつじ公園

 これも同じで、琉球白ツツジというツツジの品種ですが、これも民間人が切り開いてつくった公園であると言われております。また、この公園がつくられた由来は、農村が大変な不作により経済的に困窮した時代に、地元の財閥がお金を出して失対事業としてこの公園をつくらせたという曰くつきのものです。
 ここから先がレインボープランの実際のスタートになります。

・家族の食事風景

 どこでも広げられる家族団欒の一こまです。食べ物を通して家族が顔を寄せ合って食べるという食の大切さ、その食の現場から培われる世代間のさまざまな思い、そしてマナー、躾が次の世代へと引き継がれていくわけです。

・生ごみの水切り専用バケツ

 当然、食事の後には食品の残滓、食べ残しが若干なりとも出るわけです。それをレインボープランでは何とか資源にしようと考えました。生ゴミをただ燃やすということではなくて、それを資源にして次の生産工程に生かすということの発想から、生ゴミだけをほかのゴミと分別していただく必要があります。したがいまして、この画面にあるように、水きりを自動的にできるという二重底のバケツになっております。内部がメッシュ状になっておりまして、このバケツの底の部分に水分がたまるという仕組みになっております。

・朝のごみ収集所風景

 水きりされた純粋な生ゴミは、市内220か所の収集所──ゴミステーションに集められてきます。これは長井市9,300世帯のうち約半分の5,000世帯が生ゴミの分別地域になっておりまして、週2回、その5,000世帯を2分割して、交互に出されます。

・ごみ収集所から運ばれる生ごみ

 出された生ゴミは、午前8時半までで終わります。その後は、長井市から委託された収集業者によって、コンポストセンターへと運ばれて行くわけです。委託業務でありまして、後からも触れるかと思いますが、この収集業務に関しては業者委託費として約1,200万円、年間必要とされております。

・空からのコンポストセンター

 これがコンポストセンターの全景です。中央の大きい建物が醗酵棟でありまして、この中では1次から3次までの醗酵が行われております。
 左側の緑の三角屋根については、醗酵棟の中から発生する臭気を曝気してから、このパイプを通して地下から土壌還元脱臭をさせようということでつくられたものです。なぜこんなに大きいのかということのわけは、できるだけ脱臭能力を衰えさせないようにという意味と、あとは、大分離れているのですが、周辺に住宅地がありますので、そういったところに臭気が漏れ出さないようにという配慮からです。この屋根がついているのは、冬の雪積期と梅雨の期間に土壌の水分が多くて脱臭能力が落ちることを防ぐためということです。

・生ごみ投入口

 いよいよ生ゴミが運ばれてきます。実際に作業する人は、シルバー人材センターの方々に委託をして、人力で投入するということになります。ここで投入された生ゴミは、ベルトコンベアで醗酵棟へ運ばれて行きます。

・畜糞投入口

 そのほかの資源として、畜糞が運ばれてきます。現在、畜産農家は1戸の酪農家だけになっていますが、全体的な原材料のバランスの関係から、現在は1戸だけというふうになっております。

・籾殻投入口

 もう1つ大切な資源として、水分調整剤の籾殻があります。これは別のラインで投入されまして、自動的に混和される仕組みになっております。

・一次醗酵槽

 水分率が60%ぐらいに調整された堆肥の入り口ということになりますが、この画面の下の明るい部分は、生ゴミがはっきりした形で見えるとおり、まだ入ったばかりの新鮮な生ゴミの状態です。画面上に行くほど醗酵が進むという過程が、この色の変化から見てもおわかりいただけるかと思います。この過程は一次醗酵で約15日間です。

・切り返しによる醗酵促進

 一次醗酵が終わった堆肥は、二次、三次と攪拌を進めてまいります。その間醗酵温度は約70℃〜80℃ぐらいに上昇しますので、有害細菌の大部分はその過程で死滅するというふうに言われております。また水分が飛んでいくことで、後からふるい分け作業が非常にやりやすくなるというメリットもあります。

・磁選機によって取り除かれた金属異物

 そのふるい分けの際に発生する異物ですが、金属類に関しては食器類──フォークとかスプーン、たまに王冠等も入っておりますけれども、これで約1か月間の金属異物です。1か月でこれぐらいですから、年間にすると100sにも満たない金属異物です。ですから、これは長井市民の誇りと言ってもいいぐらい分別のしっかりした生ゴミであると思っております。

・堆肥の袋詰め作業

 こうやって堆肥ができて、いよいよ農家に、あるいは家庭菜園等の現場で使っていただくわけですが、1つにはこうした袋詰め──15s詰めで320円で販売しております。

・堆肥の散布作業

 生産農家で大量に使う場合には、バラで運ばれて行きます。バラの場合は、1トン当たり4,000円。その販売ルートは、JAを通すということで、ほかの選択肢はありません。

・農地登録表示が立つ圃場

 いよいよ今度は生産へという工程に入って行きます。この画面中央に白いカードがあります。ここにはレインボープランの参加農家の氏名、農地の地番、面積が明記されております。つまり、どこで、だれがやっているかということがこれではっきりするわけです。農地を登録していただくのは、後からも触れますが、認証制度というものとの関連から、これをしっかり掲示してもらうということになります。

・巡回研修

 参加農家が、それぞれの生産者の農地を巡回して、いろいろな学習、意見交換がなされます。これによって、それぞれの生産者のレベルアップにつながっていくものと思っております。

・総合学習によるレインボープラン体験

 ただ単に食べ物を作る現場として農地をとらえておりません。教育の現場にも変わり得る場所です。長井市では総合学習の1つのテーマとして、レインボープランが取り入れられております。市内の小学生たちが収穫作業や草取りを手伝いながら、また参加農家の話を聞きながら学習しています。

・認証シールが添付された農産物

 いよいよ出荷という段取りになりますが、この出荷の際には、先ほど申し上げた認証制度をクリアしたものしかレインボープラン農産物としては販売できません。その証しとして、この認証シール(44ページ掲載)が必ず貼りつけられます。認証を通らなかったものも、残念ながら発生します。それは途中で病虫害を防ぐためにどうしても農薬の散布回数が多くなってしまったとか、肥料設計そのものはよかったのだけれども、後で足りなくなって追肥を化学肥料で補ったというような場合は、認証シールを交付されません。その場合は一般農産物として流通するということになります。

・栽培履歴が掲示された量販店売り場

 今度は販売ということになるわけですが、これは市内の量販店の売り場です。ちょっと小さくて見えないと思いますけれども、それぞれの売り場にレインボープラン農産物の栽培歴が明記されております。生産者の名前、連絡先、そして作物名、それと一番大切な使用した肥料、使った農薬の資材名が明記されています。

・量販店のレインボープラン農産物専用コーナー

 こうして量販店ではコーナーをつくって販売をするというところもあります。不特定多数のお客様ですから、必ずしも長井市民だけにお買い求めいただくということになりませんけれども、専門店だけではなく量販店の経営者も販売してみたいという魅力のある商材でなければ量販店では手を出しませんから、こうしてコーナーをつくるということは、量販店としてもレインボープラン農産物は魅力あるものだということを物語っていると思います。

・アンテナショップ「長井村塾」売り場

 流通の選択肢が1つというのは弱いと思っておりまして、そのほかにも流通の選択肢を設けております。これは小さい規模ですけれども、アンテナ機能を持たせた常設店をレインボープラン推進協議会が設けております。ここでは、レインボープラン農産物の加工食品なども含めて販売されています。

・日曜市風景

 それと生産者みずからが直接販売することによって消費者とのコミュニケーションを図る。そういう目的で、現在は週1回、毎週日曜日に定期市を開催しております。

・バイキングによる学校給食風景

 それと、私が一番自慢したいのは、学校給食の食材として供給しているということです。長井の学校給食はセンター方式で、毎日約4,000食をつくっております。そのうちの米飯給食が週4日あるわけですが、その全量をレインボープランの認証を受けたコメで供給しています。
 また、そのほかの野菜に関しては、まだ生産能力が小さいということで、スポット的に使ってもらっております。

・認証農産物によって作られた加工品

 先ほど申し上げたアンテナショップにおいては、野菜だけではなくて、加工食品も取り扱われております。こうした加工することによって付加価値が生まれるのと、食材の広がりが出てくるということです。生産者と加工業者が力を合わせて新しい商材を開発していますが、これはその例として豆腐と味噌です。

・認証農産物によって作られた菓子

 そのほかにこうした菓子類の開発もされております。この菓子に関しては、前の画面でごらんになったように、豆腐の搾りかす、つまりおからをクッキーやサブレにしようということでつくられたお菓子です。

・認証農産物を利用した食堂メニュー

 これはおいしそうなラーメンですが、市内の食堂やレストランにおいて、レインボープランの野菜を使った新しいメニューが開発されています。これは「長井ラーメン」という名称で売りに出されておりますが、トッピングにレインボープランの野菜をふんだんに使う。そしてヘルシーなラーメンとして売り出しております。

・視察者に説明する「市民ガイド」

 これは市民の学習、あるいは視察に来られた方々に対して説明をしている風景ですが、ここ2年の間で「市民ガイド」という仕組みをつくりました。それはレインボープランの持っている特質、そして現場をごらんいただくことによって理解を深めるための案内をする方です。それを今までずっと行政の担当者が紋切り型の案内をしておったわけですけれども、それではおもしろくない。レインボープランとはどういうものであるかというのを学びに来られた方に対して、感情のこもった、そしてより理解を深めていただくような案内の仕方ができないかということで、アウトソーシングの形で去年からスタートしております。

・海外からの視察者

 国内からの視察にとどまりません。海外からもたくさんの方々が視察にお出でになられます。国際協力事業団のご紹介で来られる方もいらっしゃいますし、あるいは農水省の紹介で来られる方もいらっしゃいます。こんなことを申し上げて大変口幅ったいのですが、レインボープランというのは、もう長井のレインボープランではなくなってしまったという感があります。すでにタイの東北地区においては、レインボープランのシステムをそっくり導入したタイ版のレインボープランというものがスタートしました。つい先ごろも表敬訪問で、タイの小さな町なんだそうですが、市長さんと随行の方々が来られましたが、今後も交流が図られると思います。(スライド終わり)

 このように地域内循環と言いつつ、ただ単に地域の中にとどまっていないということを物語っているような気がするのです。資源というものは限りあるもの、そしてその移動のためのエネルギーも膨大なものということを考えれば、できるだけ小さなエリアの中で循環させたほうがメリットがある。それは物質の循環ということにおいてはそうかもしれません。しかし、人々の循環あるいは情報の循環というのは、その地域を越えて、あるいは人を介して広がりを持つものだということを、このレインボープランを通して学んだわけです。今まで培ってきたレインボープランの実際の動きを映像でご紹介しましたが、これから先は、それにまつわるところのいろいろなテーマについてお話をさせていただきたいと思います。

(2)認証制度が必要なわけ

 それでは、先ほど認証制度ということをお話ししましたが、お手元に資料を準備させていただきました。『農家と消費者との地域循環システム』(32〜37ページ)という認証マークの入った資料です。
 資料の44ページに認証制度に関する資料があります。ごらんいただけばわかるという範囲のものですけれども、考え方、実際の登録の手段、そのためのフローチャートが45ページにあります。
 46ページからは別表としてそれぞれ認定の基準というのがあります。農地の認定区分、生産管理の認定区分、そして総合認定区分というふうに分かれております。それも作物ごとに違っております。1つは葉根菜類、2つ目として水稲・麦類、47ページには大豆、そばというふうになっております。
 なぜこんなに詳細に分けるのかということを申し上げますと、作物によって堆肥の投入量、栽培管理を適性にする必要があるためです。基本的には化学合成薬品による土壌消毒・除草剤は使用しないということがあります。それと、50%の減農薬減化学肥料栽培というのがベースになっております。それがボーダーラインということです。それを超えた場合は認証は出来ませんという仕組みです。
 では、なぜこのような認証制度が必要だったのかということですが、1つは、ほかの農産物との色分け、区分けというものが絶対必要なわけです。そのための制度が必要であった。同時に、認証シールの貼られた農産物というのは、生産農家の誇りでもあるわけです。自信と誇り──つまり印籠と同じなわけです。それと、消費者の立場からすると、安全が確認できるということです。そこに安心が生まれるわけですから、認証シールを通して生産者と消費者がお互いに信頼し合うことができる、あるいは理解し合うことができるということです。そのためにどうしても認証制度が必要であったということです。

3.地域循環システムが必要とされたわけ

 次に、この地域循環というものがなぜ必要だったのかということを申し上げます。
 これは1988年にさかのぼるのですが、住民参加型の町づくりというのを当時の市長が掲げられて、97名の若者たちが未来の長井をどうつくっていくかということを議論し合いました。農業の分野で出されたテーマの中に大変大きな問題がありました。消費者のニーズが最近変わっているのではないか。つまり消費者の動向がすぐさまはね返ってくるような生産現場に変わりつつありました。過去の量から質への転換、その消費者のニーズの変化に敏感に反応し、こたえるためには、農家もそれなりに変化しなければいけないという問題です。
 それと、堆肥が足りないぞという危機感です。農村に牛馬がいなくなりました。つまり農耕馬、農耕牛というものが農家から消えたことによって、堆肥の生産システムそのものが断たれてしまった。それは機械化と科学技術の導入によってつくられてしまいました。結果として土が衰えていくというのが目に見えてわかるようになりました。
 もう1つ、長井市には、先ほど申し上げたとおり2,900haの農地があります。これほどの生産能力を持ちながら、地元でつくられた野菜、果物、コメはもちろんのこと、地元の消費者に渡っている割合がとても少ないということです。つまり大量生産、大量出荷、そして大消費地へという流通のルートが常識化されていたためでした。ですから、大部分の食材が長井から供給されるのではなく周辺の地域から、そして遠隔地から入ってくるというまことしやかに正当化された流通ネットのなかにあったのです。言葉として正しいかどうかわかりませんけれども、私たちはそれを「地域自給率が低い」という定義づけをしました。
 今、申し上げた3つの課題をどうクリアすれば長井の農業が発展あるいは農民自身の豊かさにつながるのかということを考えました。それで翌年の1989年に組織を変えて、新しい人材を得、そこで議論された結果、土をベースにした、そして食をベースにした農村のあり方に変えようということを提案したわけです。つまり循環型の社会につながっていくわけですが、そこで着目したのが給食施設から出る生ゴミ、家庭から出る生ごみ、もちろんいろいろな事業所から出る生ごみもあります。そのほかし尿汚泥とか、さまざまな有機資源がありました。それを未利用の状態ではなく、土づくりの資源として活用するために生ゴミを主原料とした堆肥化事業という構想が生まれたわけです。

4.レインボープランの持つ理念

 それが地域循環システムというものが立ち上がる原点となっていくわけですが、その基本的な理念、レインボープランの持つ理念というのは、食と農をベースにした循環システムであるということです。人間というのは、あるいはほかの生命体でも同じですけれども、どんなすばらしいクルマを持っていても、どんなすばらしいコンピューターシステムを持っていたとしても、それを直接体の中に取り入れて生存することはできません。つまり食べ物がなければ人間というのは存在し得ないのだということです。それならば、その食というものを安全な形で提供する。そしてまた生産者と消費者との間でお互いが食べ物をつくり合うという関係が、地域内循環というシステムによってなされるというふうに私たちは思っております。ですから、使っている資源は「ゴミ」の2文字がついてますが、ゴミ処理という観点からではないということを強く申し上げたいと思います。
 それと、食べ物をベースにしますと、どのような財閥も、どのような貧しい人も、皆同じなんです。それは命を支えるということからすれば、食べる中身は違ったとしても、基本は地域でそれぞれの役割を持つ人として、地域に住む人間として、平等性を持っているわけです。そのためには職域を越え、まち(消費者)とむら(生産者)を越え、そして年齢を越え、そういう平等性を基に「共に」の精神で町をつくっていこうということです。ですから、百姓であろうが、役所の公務員であろうが、対等の立場で意見を交わそうというのが「共に」の精神です。今までの「やってあげる」あるいは「やらされる」という関係ではなくて、「一緒にやろう」という関係です。この循環を立ち上げるとき、提案したのは私たち百姓ですが、形としてつくり上げる過程の中でかかわった人々は女性団体、消費者グループ、それから商工会議所、農協、清掃事業所、役所、お医者さん、そういった方々に一人一人の委員として議論に参加してもらいました。そこで議論を積み重ね、合意したのが地域循環システムです。

5.レインボープランの過去6年の成果

 そうした「共に」の精神によって動いてきた循環システム「レインボープラン」の過去6年の成果を少し申し上げてみたいと思います。

(1)可燃ゴミ総量の約30%減少

 1つ目は、時期によって差がありますが、レジュメにもありますとおり可燃ゴミ総量の約30%は減ったということです。ゴミの減量化に寄与していることになるわけで、最大で36%まで減りました。年によって若干の変動がありますけれども、大枠でどこの自治体でも厨芥類のゴミの割合はそう変化がないそうですから、30〜40%の範囲の中で、どこでも減らせる。言い換えれば、3分の1が資源になるということはすごいことだというふうに申し上げたいと思います。
 それを収支の面でご説明申し上げます。先ほどの資料の43ページをごらんください。
 ここにはレインボープランコンポストセンターの管理運営費が記載されています。
 まず歳入としまして390万円──約400万円。これは堆肥の販売金額と、畜ふん──先ほどスライドでは運んでもらっておりましが、その処理費用が含まれて約400万円。それにひきかえ歳出が3,570万円。とんでもない赤字です。それに加えて、収集業務委託費として約1,200万円。これを計算しますと、途方もない赤字事業になります。この数字をもってすればそうなるのですが、ところが生ゴミがもし可燃ゴミとして焼却処理をされていたならば、その分は処理費用として支払うことになる。長井市を含む置賜地域に8つの自治体があります。その8つの自治体によって広域行政組合をつくってゴミの処理をしております。ですから、トン幾らという形で負担をしなければなりません。トン約2万7,000円ほどです。生ゴミが年間約1,500トン出ますから、それを計算しますと約4,200万円の経費が浮くという計算になります。それと、あとは生ゴミをゴミとして出す場合は、必ず袋に入れて出すことになります。それは1袋40円という有料負担になっておりますから、1,500トンを約10sずつ入れたと仮定しますと、袋代40円を掛けると約600万円の支出の減になります。そうすると、このトータルの赤字分についてはほぼ相殺されてしまう。なかなかお金として実際に動きませんから、収入というふうに見ることができるのかどうかわかりませんけれども、でも税金を使わずに済んでいるわけです。そのことを評価していただかないと、つまりコスト論でこのコストを考えたら地域循環ということはできません。そのことを強く申し上げておきたいと思います。
 加えて申し上げれば、コスト論以上の「生産」という次の新しい手段があるわけです。つまり農産物の生産過程の中での経済行為もメリットと見るならば、そこから先はプラスになっていく。しかも、地元の安全な農産物を食べ続けることによって健康被害が減ります。健康被害が減れば、当然医療費が軽減されます。医療費の軽減が進めば、健保財政だって安泰になります。そうした有機的な発想をもってすれば、この地域循環システムというのはものすごい経済効果を生むということが言えるのではないでしょうか。それが直接ゴミというものの小さな観点からだけ議論してしまうから、その先が見えなくなるというふうに思います。ちょっと大き過ぎるような話をいたしましたが、私どもはそういう解釈の仕方をしております。

(2)参加農家の農産物栽培状況と意気込みの喚起

 次に、参加農家がどれぐらいあったかということですが、これも資料に掲載させていただきました。48ページです。「レインボープラン農産物栽培状況」としまして、1994年のモデル事業──研究事業と言っておりますが、有機栽培の研究事業が始まったときからの参加農家の変遷です。最初の1994年はたった8戸でした。これは委託をして研究してもらったということから少ないわけですが、1997年からレインボープランのコンポストが順調に生産されていく過程の中で参加農家が32戸とふえてきております。その後、若干減った年もありますけれども、2001年度は50戸、2002年度は78戸で、2,118aです。このような栽培状況のプロセスを踏んでおります。
 ここで減った年があると申し上げましたが、やはり安定的生産システムがなかなか定着しにくいというマイナス要素がありました。それと、もう1つの要素として、レインボープランの堆肥を使っているから、それだけでいいのだろうというふうな考え方で取り組まれた方もいらっしゃいます。結果としてそれは認証という基準がクリアできなかったということ等から変動がありました。ですが、行きつ戻りつの中で、少しずつ参加農家と栽培面積はふえているわけです。
 そして、何よりもこの不安要素を抱えながら参加した農家のかなりの人達が、これはおもしろいものだと感じ始めています。つまり今まで消費者との対話など全くせずに、つくることだけに黙々としていた農家が、消費者と直に声を交わし合い、そしてまた、「おいしかったね」と言って評価されることの満足感が農家のやる気というものを喚起しています。

(3)市内の小売店をレインボープラン農産物取扱店に指定

 それから流通の選択肢をいっぱい設けました。先ほども説明申し上げましたが、既存の流通ルートは、市場から専門店や量販店に流れるというルートです。市場に出すと、どこのだれが買っていくのかわからないということがあるわけですけれども、域外の小売店に渡ってしまったら循環にはならない。それをどう防ぐかということの知恵として、長井市内の小売店をレインボープラン農産物取扱店として指定させていただきました。それは公募によります。現在量販店も含めて6店舗プラス米屋さん2店舗で、現在、8店舗になっております。

(4)学校給食にレインボープラン農産物の供給体制を確立

 それと、学校給食への供給体制ができました。これはちょっと誤解されるかもしれませんが、こんな表現をしたいと思います。学校給食で食べるのは子供たちです。それぞれ消費者の家庭から見れば、子供たちあるいは孫が食べる食材としてレインボープランの農産物が使われるということは、ちょっと言い方が乱暴かもしれませんが、子供たちの食の安全を人質に取ってしまうということになるわけです。それは何をあらわすかといいますと、「しっかりとした生ゴミの分別をしなければならないね」ということになるわけです。よく生ゴミの中に吸い殻がポイと捨てられる行為もかつてはあったようです。それを逆に子供から指摘をされて、「父ちゃん、タバコを捨てたらだめだべ」と言われたお父さんが、ハッとして「あ、そうか。お前たちが食う食材の資源としてこれが使われるんだな」ということに改めて気づいたというエピソードがあるぐらいです。
 ですから、子供たちを介することで大切な食への安全性、そして分別のこだわりというものが自然に発生するということだと感じました。

(5)飲食業者がレインボープラン農産物を自主的に使用

 それと、飲食店です。先ほどスライドではラーメンを紹介しましたが、そのほかにレインボープランの認証を受けたそば粉100%のそば屋さんもあります。それからホテルや旅館でお客様に出す食材として使ってもらっています。特にレインボープランを視察に来られた方が長井にお泊まりの場合は、優先的に使うということをお願いしておりますし、またそういった業者に自主的にご使用いただいています。

(6)レインボープランの農産物の加工食品開発

 それと、加工食品開発という新たな経済行為が生まれました。先ほどスライドでご紹介したように、醸造業だけではなくて、お菓子屋さんとか、あとは、これはおもしろいのですが、参加農家と消費者の幾人かがお互いに出資をして漬物の加工場をつくったのです。この名前が「ほのぼの会」という名前で今年スタートしました。その評判が大変よくて、漬け込んでも漬け込んでも足りないぐらいだというほど人気があるというふうに聞いております。ですから、ただ単に農産物という食材として販売するのではなくて、加工という新たな分野が加わることによって、大きな広がりを見せ始めています。

(7)参加農家が教育現場で食農教育、環境教育を援助

 次に、教育という現場です。この教育現場での取り組みというものが、このレインボープランの特徴の1つでもあろうかと思っております。総合学習というカリキュラムが取り入れられたことで、どこの学校でもどういうテーマを取り上げようかと、かなり先生方が苦労しているというふうに聞いています。その解決策の一つとして、このレインボープランというのは、食べ物を通した食の教育、そして生産現場とのつながりから、農をテーマにした教育、つまり食農教育というものが、このレインボープランを通してうまく機能しているということです。その教育現場には、私たちレインボープランに関わっている者が行っていろいろなお話をさせていただいたり、あるいは地域の参加農家の方が、学校の持っている、あるいは借りている農地に出向いて行って栽培指導をするということも行なわれています。それから、今年は推進協議会の独自の事業として「キッズファーム」というものを立ち上げました。もちろんそれは認証制度に基づいたつくり方を子供たちに学んでもらい、そして食べ物と農業について理解を深めてもらう、そのための仕掛けです。
 加えて食農教育プラス環境教育という切り口からも、大変このレインボープランというのは有効であるというふうに思っております。食べ物の生産現場は土です。その土の中に存在する命、目に見えない命を学ぶことから環境というものがふくらんでいきます。1グラムの土の中に数億と言われるぐらいの微生物がいると言われておりますけれども、その微生物の働き、そして微生物が活動できる環境を考えるという観点からすると、それは地球全体へというテーマに広がっていきます。微生物といえどもその教育的視点と効果はあなどるなかれということではないでしょうか。

6.レインボープランの課題

 しかし、今まで申し上げた成果についてはいいところばっかりですが、このレインボープランにも弱点はあります。これは大きな課題であります。

(1)農村に農民がいない

 まず1つ目の課題としては、農村に農民がいないということです。先ほど参加農家の状況をお話ししましたが、なぜ参加農家にブレがあるのだろうか。あるいは爆発的にふえないのだろうかということを考えてみますと、これはレインボープランに限りませんが、いろいろなメニューが、農業振興という名目でいっぱいあります。だけど、一体それを受けてだれがやるの、だれもいないよ、農村に農民がいないよ、じいさんとばあさんしかいないところに、どんなすばらしい構想を持ち込んだとしても、それは空論にしかすぎない。これは断言します。そこに日本の農業のとても危うい世界があるのではないかと思っております。

(2)消費者のレインボープラン農産物購入志向の言行不一致

 それともう1つ、このレインボープランを立ち上げるに当たって、消費者や生産者がどういう理解をしてくれるのかということがまず不安でした。安全な農産物を作るという過程はそれほど困難ではありません。だけど、こだわりを持った農産物を長井の消費者が買ってくれるのだろうかという心配がありました。だったら、それを事前に調べてみようということでアンケートをとったのです。「生ゴミを使った堆肥を今、長井市ではつくろうとしています。その堆肥でつくった農産物をあなたは買いますか」という質問をしてみました。つまり直接的に聞いたわけです。その答えとして、いろいろな条件がありました。「安全であれば買う」「価格がそれほど高くなければ買う」という条件つきも含めて、「買ってもいいよ」という数字が何と93%だった。何か裏側で誘導したきらいがなくもないのですけれども、幾ら何でも93%は高過ぎました。

 案の定、流通ルートを通して販売する過程の中で、それほど爆発的な購買行動ではない。つまり言行不一致があったということです。やはり買ってもらってこその生産でありますから、描いていた程に買ってもらえないというさびしさは大きなダメージがありました。もっとも栽培面積が多くて潤沢にどこへ行っても買えるという状況でないのも、また1つの大きな要因でありますけれども、取扱店を指定させてもらって、どこで売っているかの紹介を市民にはしているわけですから、積極的に買おうと思えば出向いて行って買えるはずです。それと、昨今の価格の暴落ということがあって、ちょっとわけありの少し高めのレインボープランの農産物との価格差、ましてやこれだけ経済不況と言われる中でできるだけ切り詰めようという家庭の主婦の思いはしごく当たり前です。
 しかし、ここのところを解決しなければ本当の意味での循環というのはあり得ないわけです。では、どうするかというのが次の解決策になっていくわけです。

7.その解決策

 ここから先は私見的な部分がありますので、レインボープラン推進協議会の方針として解釈しないでください。先ほど農村に農民がいないということをお話ししました。なぜいないのかというと、兼業農家が増大し、またその兼業農家も第二種がほとんどであるからです。第一種兼の割合がどんどん減っております。若干ふえているのが専業農家という構成ですから、その限られた農民に受け入れてほしいということを申し上げたとしても、その容積は小さいということです。その解決方法の2つをご提示したいと思います。

(1)世襲型農業からの脱却

 1つ目は、世襲型農業をまずやめようということです。代々農業をつないでいくというのはもう完璧に壊れましたから、そういうものから脱却しようということです。

ア)集落単位の農業経営

 その1つの提案として、集落単位で農業経営をしませんかというのが1つ目です。兼業農家であろうが、専業農家であろうが、その農家の種類は問いません。その域内にある農地を、経営法人を立ち上げて受委託関係を結ぶ。そしてブロックローテーションを導入しながら土を守っていく。次の生産につながるように農地を維持していくということが、そこで成り立っていくのではないかというふうに考えております。この中身については、きょうは詳しくは申し上げませんが、見識の高い皆様ですから、おおよその見当はおつきかと思います。

イ)レインボープラン推進協議会の直営農場

 それと、2つ目です。このレインボープランというものは市民のボランティアによって支えられています。この手法で農業経営ができないだろうかと思ったのです。レインボープランという受け皿をつくっておいて、農地の受委託関係を結ぶ。つまり推進協議会が農地を借りる。その農地を活用して、消費者も生産者も出資する。その出資金によって雇用あるいは生産資材というものの費用に充てる。そしてつくられた農産物は、ボランティアの皆さんに現物で還元するなり、あるいはお金でお渡しするなり、収益をプラスマイナスゼロにするという考え方で農地をつなぐということを基本にした直営農場ができないだろうかと思っております。ましてやこれだけ学卒者の就職が厳しい中にあって、山形もひどいものです。地方ほどひどいという状況にあります。そうした高卒あるいは大卒の若者たちの就労の場としてもそれほど高級なお金は取れないかもしれませんけれども、何しろ健康でそこで働けるならば、そして健全な食べ物を食べられるならば、それはお金に代え難いものがあるのではないかというふうに思い、今までの既成概念を取り払った形の農業経営をしていかないと、どうにもならないというふうに考えました。
 極端な話、規制を取り払うという小泉総理大臣の特区という構想もありますが、農業特区という形の中で、企業が農業経営に参入する道も開こうとしておりますけれども、もし企業が参入できるのでしたら、私はむしろそのほうがいいと思っております。反対する人はいますけれども、これだけ自給率が低下し、農村に農民がいないという現実を見たならば、それだって有りかなというのが私の意見です。

(2)グリーンコンシューマーの育成

 それと、消費者の動向をどうするかということです。やはりグリーンコンシューマーの育成と一口で片づけてしまいますけれども、環境に配慮した消費者を育てなければいけないのではないか。お金の問題だけで消費行動をするというのではなくて、次の世代を前にして、ふと立ちどまった形での消費行動が必要なのだろうと思います。まだまだ環境というと、自然環境とか、公害問題とか、そういうところでの議論は活発に行われますけれども、環境に配慮した消費行動をしましょうといううねりは、そう大きくはないと思っております。そういう意味で国家的なテーマとしても不思議ではないグリーンコンシューマーの育成ということが必要なのだろうと思っております。
 その端緒として、長井では商店街と手を組んでエコバッグを導入したり、リサイクルショップを出し、そこで農産物の販売も行なっています。こうした取り組みの延長上にグリーンコンシューマーが育つと信じています。

8.まとめ

 与えられた時間が間もなくまいりますので、まとめをしたいと思います。

(1)時代の転換点

 まず1つ目のまとめとしては、我々は時代の転換点にいるのだというふうに思っております。「平成維新」ということを言う人がいるぐらい本当に時代の転換点に立たされているということは間違いないのだろうと思っております。そういう意味では我々は大きなチャンスをもらったということかもしれません。かつての大量生産、大量消費、大量廃棄という、ただお金になれば何でもありという時代から、「スローライフ」という言葉で言われているように、もっと立ちどまって、本来の暮しのあるべき姿というものを問い直そうという、その1つが、循環社会なんだろうと思っております。

(2)新しい生活文化の創造──超一流の田舎になる──

 それと、私が話をする場合、いつも最後に申し上げることなんですが、かつての生活文化を引き継ぐということも大切なことです。脈々と受け継いできた文化的思想、暮らし方というのは、地方ほど本物が残っております。そうした本物を引き継いでいくということは大切なことです。しかし戦後、失われてきた──私は「失われた50年」と言っていますが、その失われた50年の中で置いてきぼりにしてきたものをちょっと問い直してみるべきです。日本全国どこへ行っても、豊かになりたいがために、都会の切り取りを田舎に持ち込み、また田舎の豊かさを都会に切り売りする。こうした行為によって経済効果というものを地方は余りにも求め過ぎました。結果として地方から都会へ若者が流れ出し、残った老人だけが悲しく暮らしているというのが現実です。
 これを変えなければいけない。若者たちが田舎にとどまれるという暮らし方を地方でつくらなければ本物ではないと思います。田舎で生活することが誇りに思える田舎、自信を持てる田舎、つまり超一流の田舎になれば、その田舎は魅力のある田舎になるということだと思うのです。そういう観点から、この地域循環というものを通して今までかかわってきたこと、その中で、微力ながら考えついた答えが、今申し上げたことです。しかし、この答えというのは出せても、そのプロセスがとても難儀なことなんです。そのプロセスを1人の人間でやろうとするのは全く不可能です。
 そのためには、自分にない知識を持っている人、自分にない技術を持っている人、そして自分にない情熱を持っている人、そういう人たちを味方につける。そういう人々と手を取り合うことによってこそ初めてこうした社会変革という一端の糸口をつかむことができると思うのです。併せて、都会の持っている能力だっていっぱいあるわけです。それを田舎と有機的に結び合うことによって、トータルとしての日本の豊かさにつながるような気がします。だから、田舎は都会の従者としてではなく同等のパートナーとしての論理が必要で、経済効率の違いを盾にした議論はまちがっていると思います。この観点から都会の消費者は、田舎との結びつきをどうするかということを考えてほしいというのが私の思いです。
 これでいただいた時間を使い切りましたので、ここで終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

柳澤

 どうもありがとうございました。ここで少々休憩させていただきます。

添付資料

1.レインボープラン(台所と農業をつなぐながい計画)推進の経過
2.レインボープラン実施に向けてのモデル事業等
3.レインボープラン全体の流れ
4.長井市レインボープランコンポストセンターについて
5.レインボープラン農産物認証制度
6.レインボープラン農産物栽培状況



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