市民のための環境問題の教科書作り

RCでは、「市民のための環境問題の教科書」作りの活動の第一歩として、2001年の1月から4月までは「水俣病問題」を題材として研究会を開きました。

その成果を、2001年4月29日に開催した報告会で三四郎内部に向けて発表しました。その際にまとめた報告書については、下記からダウンロードできますので、是非ごらんいただいて、ご意見やご感想をお寄せください。

将来的には、この報告書をベースに皆さんからいただいたご意見などによって改善を加え、教科書の1つの章としてまとめてゆきたいと考えています。(2001年5月現在)

2001年度 RC 第一回活動報告書(水俣病問題)普及版PDF(217KB;44ページ)

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環境三四郎Research Center(通称、RC)が発足して、半年が経とうとしている。学部生から研究者まで世代を越えた枠組みにより、継続性・公開性の高い活動を行うことを目的として発足したRCのこれまでの活動及び今後の展望について、共同代表の山下英俊さん(東大新領域助手)、泉桂子さん(東大農学部研究員)に話をうかがった。

RCの活動 〜調査研究&支援〜

RCの活動内容は大きく2種類に分けられる。一つは、環境問題に関する調査・研究・情報発信、もう一つは、他部門の調査活動の支援である。これらの取り組みは、「10年先、20年先を見通した時に、環境三四郎が国内有数の調査研究型NGOとして活躍できるようになるための準備運動の一つ」(山下さん)であるそうだ。

最初の2,3年の中期的な活動としては、「市民のための環境問題の教科書」を作ることを目標としている。「市民のための」という言葉には、『霞が関』や『中央の大学』という権威から与えられる『上からの』教科書でなく、自らの生活や足元から環境問題をとらえるための教科書を、という意図が込められている。とくに、調査研究により教科書を作成、情報発信するだけでなく、結果を何らかの形で駒場や本郷での活動に生かしていくことを考えている。

水俣病勉強会〜教科書の第一章〜

RCの最初の活動として、2001年の1月から4月までの約4ヶ月間、「環境問題の原点の一つ」ともいわれる「水俣病問題」を題材として研究会を開催した。研究会は全部で5回、主に共同代表の泉さんのご自宅で行われ、和やかな雰囲気の中、熱く議論を交わした。

具体的には、メンバーで分担して約20冊の文献を精読し、重要箇所を抜き書きしてデータベース化、これを基本資料として、事件史の時代区分をし、詳細な年表を作成した。さらに「原因究明」「胎児性水俣病」などの重要項目別にデータベースを整理し、事実関係と論点を洗い出した。研究会ではこれらの作業の中で、「水俣病患者は水俣病で何を奪われたのか?(「固有の水俣病」の概念)」「なぜ水俣病が発生し被害拡大してしまったのか?」「患者は救済されたのか?(認定問題)」などの観点で討論も行った。

結果は、約300ページの分厚い報告書にまとめられている。また、気軽に読めるようにと普及版(44ページ)も用意されており、ホームページ上で自由にダウンロードできるようになっている(http://www.sanshiro.ne.jp/reference/index.htm)。将来的には、この報告書をベースに環境三四郎内外の意見を取り入れて改善を加え、教科書の1つの章ととしてまとめる予定である。

さらに、この調査研究結果を利用して、RC活動報告会を兼ねた「環境の世紀 未来への布石[」の第4回原田正純先生の講義に向けた事前勉強会を4月29日に行った。これは、RCのもう一つの役割として挙げられている「他部門の調査活動の支援」を実現したもので、「原田正純先生、宇井純先生が東大で講義することは、水俣病の歴史を調べれば調べるほどものすごい歴史的瞬間であることを実感する」(泉さん)ことから、その貴重な講義の場を活かすために企画された。勉強会には新入生から社会人、大学院生まで20人以上が参加した。なかでも、新入生が半分近くを占め、良い刺激となったようだ。

RCの今後

発足後の約半年間は主に調査研究を行ったことから、しばらくは水俣研究会の結果を利用しての他部門の調査活動への支援について考えていく予定である。具体的には、(1)水俣への調査合宿、(2)高尾山プロジェクトや里山プロジェクトとの共同勉強会、(3)講師の紹介や講演会の実施、などが挙げられる。

「水俣病以外でも、調査研究などについてできるかぎり支援したいと考えているので、駒場で新たに活動を始めるときなどには、気軽に声をかけて欲しい」と山下さんは語る。


コラム:大竹史明さん(東大農学部大学院生)にとっての水俣病問題研究会とは?

RCの活動を始めた動機は、現在院生であり数年後には社会人という現状で、将来を見据えた息の長い活動を展開していきたい、そのために、どのような活動が有効であるか試行錯誤をしていきたい、という気持ちからです。

水俣病について本格的に本を読み、何よりも強く心に刻まれたのは、患者さん達の生の声でした。謂れのない被害を受けて苦しんでいる人がいる(患者というより受苦者sufferer)、その奪われたものは単に健康だけではなく多様で、個人個人異なっている(固有の水俣病)、そして救済を渇望して立ち上がった人々の生涯かけた運動。

今思っているのは、どうしても水俣に見学に行きたいということです。

考えるだけではなく手を動かし足を動かすという、駒場時代からのスタンスは大切にしたいと思っています。

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