環境の世紀XI
〜ごあいさつ&コンセプト『エコブームを問い直す』について〜

ごあいさつ

テーマ講義『環境の世紀XI』へようこそ。今年度のテーマは《エコブームを問い直す》です。たとえば皆さんは、ペットボトルのリサイクルが本当に環境問題の解決に役立っているかどうか、疑問を感じたことはないでしょうか。一般に、ペットボトルをゴミとして捨てるより、リサイクルした方が資源の節約になるし、ゴミ減量にもつながるので、環境への負荷が軽減されると言われています。しかし、リサイクルするためには追加的なエネルギー消費が必要であり、しかもリサイクル産業を発展させるためにペットボトルの生産量が増えることになったとしたら、全体として環境への負荷は減るのでしょうか、それとも増えるのでしょうか。

皆さんがこのような疑問を持ち、それを何とか解明したいという気持ちを持っていれば、この講義を受講する資格はすでに十分あるでしょう。また、今までそんなこと考えもしなかったが、何か面白そうだなと感じた人も歓迎します。専門知識は要りません。皆さんはこれから毎回、様々な専門分野に属する講師の先生方から環境問題について多様な(そして時には対立する)見方を学んでいくことになります。専門的な説明が全部理解できなくても、一向に構いません。環境のためになるとして実施されていることの多くは、ある条件のもとでのみ意味を持ち、条件が変わったり取り払われると、無意味になったり逆効果を招いたりするのだ、ということが大筋で理解できればそれでよいのです。

20世紀の末に始まったこのテーマ講義シリーズは、過去10回にわたって「未来への布石」という副題をつけておりました。21世紀という「未来」が未来ではなく現在となった今、このシリーズも「環境学のスヽメ」という新しい副題をつけて再出発です。挑戦するのは皆さん自身。この授業では受身ではなく自ら考えようという皆さんの積極的な姿勢が最も重視されます。そして、さらに問題を深く学び、討論を通して自分の考えを確かめてみたい人のために、「環境の世紀ゼミ」を用意しました。興味のある人はこちらにもぜひ参加してください。

責任教官  大学院総合文化研究科国際社会科学専攻教授 丸山真人


『環境の世紀XI』を受講される皆さん、こんにちは。この講義の企画運営に関して学生側の責任者を努めている、環境三四郎の鎌田雄一郎と申します。

この講義の最大の特色は、環境問題を扱っているということもさることながら、学生が講義作りに参加している、というところにあるでしょう。この講義では、責任教官である丸山先生、後藤先生のもと、講義全体を通してのコンセプト考案から講義をされる先生方の選考、そして実際の講義の依頼に至るまで、学生が協力させて頂いています。

現代は、ともすると何が正しいのか分からなくなってしまうような混沌とした時代です。それ故に、次代を担うことになる私たちには、一人一人がより自発的な思考力・行動力を持つことが求めれていると言えるでしょう。教官による一方的な講義を脱したこの講義は、まさにこの時代に求められている形の講義である、と言えます。

これだけでも他の講義とは一味違った講義ですが、やはり教官の講義を聴くだけでは物足りない、という方のために、講義後の事後ゼミも用意されています。ゼミの場では、自らの意見を他者に説明したり、ワークショップなどで実際に取り組んでみることで、参加者一人一人が環境問題に対する見識をより深めることができます。

皆さんが積極的にこの講義に参加し、環境問題にかかわらず様々な問題に対して多面的な視野を持って臨むよい契機にしていただけたら、と思います。

環境三四郎「テーマ講義運営プロジェクト」責任者 理科U類2年 鎌田雄一郎


コンセプト『エコブームを問い直す』について

今年の「環境の世紀XI」のコンセプト「エコブームを問い直す」は、以下のような思考と議論を経て決まったものです。

「環境にやさしい」「地球を守ろう」…………こういったフレーズが、社会の表舞台で声高に叫ばれるようになってから、もうだいぶ時がたちました。

60年代に公害問題として被害者の市民と加害者の企業・行政との対立の構図で登場し、その後の地球温暖化やオゾン層破壊の問題のクローズアップなど経て、「環境問題」として広く認識されるようになった一連の問題は、今や行政も企業も市民も無視することのできない重要な問題となっていることは確かです。

一方で、一般の人々の間では、90年代に入ってから、「環境」から想起される「自然のやさしさ」といったイメージが、癒し・パステルカラー・丸みを帯びたデザインといったものとリンクした結果、「環境」がこれらソフトなものの流行の中に組み込まれているのが現状です。

こういった状況の下で、環境問題はもはや「トレンド」となっていると言うことができるでしょう。

しかし、こうして誰しもが「環境問題」を口にするようになったからこそ、もう一度冷静になって考える必要があるのではないでしょうか。現在行われている環境対策が、本当に地球環境改善に貢献するものなのだろうか。その裏側には何か思惑が潜んでいたりはしないだろうか。エコな商品を買うことは、環境問題解決につながるのだろうか。トレンド化してしまった「環境問題」を考えていさえすれば、人間は環境問題に対処できるのだろうか。こういった疑問を、私たちは抱きました。

これらの疑問を持ちながら、何回もの議論を重ねた結果、今年度の環境の世紀のテーマは「エコブームを問い直す」としました。

『環境の世紀XI』では、このテーマのもとで、個々の具体的な事例から環境問題が論じられる土台となる考えまでを幅広く扱います。この講義を通して環境問題についてのみならず、他の分野にも幅広く活用できる視点を受講生の皆さんが獲得できることを願います。



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