テーマ講義 環境の世紀XT

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活動紹介

 環境の世紀はもはや未来ではなく現在であり、布石を打つ時代は終わった。そんな認識から今年度のテーマ講義はタイトルが『環境の世紀XI 〜環境学のスヽメ〜』と変わってスタートした。また今年度のコンセプトは「エコブームを問い直す」として行われた。ではエコブームを問い直すとはどういったことなのだろうか。今年度のテーマ講義企画・運営プロジェクト責任者である鎌田雄一郎さん(11 期) と来年度の責任者田中序生さん(12 期)、副責任者の小川拓哉さん(12 期)・佐野史明さん(12 期) に話を伺った。
[記事:大竹史明(4期)]

エコブームを問い直す

 今年度のコンセプトである「エコブームを問い直す」について教えてください。鎌田「かつての日本には、環境と経済成長・企業と住民、のような対立構造がありましたが、現在は皆が環境配慮を謳っており、様々な局面で環境問題が叫ばれるようになりました。このような状況は『エコブーム』と呼べるのではないか?では実際にエコブームは環境改善につながっているのか?そういった問題提起をしたいと考え、今年のコンセプトが決まったのです。」

今回の目玉は

授業風景

 今年の目玉は何と言っても山下英俊さん(0 期、一橋大学講師) の出講ではないですか?

 鎌田「そうですね。山下さんには、『環境を研究する上での心構え』『東大に環境学は可能か?』といった大きな枠組みで話をして頂き、とても面白かったです。」

 田中「環境問題の全体像について考える機会になりました。一年生の間で『T 字型でなくらせん型の専門性というけど、本当にそれが可能なのか?』と議論にもなりました。」

 ‐環境三四郎の発表枠「わくわく」も盛り上がったと聞いています。

 鎌田「はい。今年は『食から見た環境』というテーマで、マクドナルドやローソン・AMPM など食に関するチェーン店やコンビニに取材し、企業の環境対策は果たして正しいのか?を検証しました。例えば、弁当を冷凍保存しておいて店頭で解凍するシステムの導入によって食品添加物不使用を売りにしている企業がありますが、環境配慮を謳った独自調査結果には冷凍・解凍に使うエネルギーを計上していないんです。」

 ‐なるほど、それが鎌田さんたちの言う「エコブーム」?

 鎌田「はい、健康問題には関心があるがエネルギー問題への関心が比較的薄いという大方の消費者に左右された対策と言えると思います。このような表面的な『エコブーム』ではなく、企業には正しい知識を持って効果的な環境配慮をしてほしいし、消費者には正しい知識で世論を形成してほしいと思います。今回の発表を通して一つ『エコブームを問い直す』ことができたかなと思っています。」

環境問題とは?解決とは?

 ‐ここからは、講義に参加した一年生の皆さんの感想を聞いてみたいです。

 佐野「僕は講義を通じて、『環境問題って結局何?環境問題の本当の解決って何?』ということを考えていました。」

 鎌田「例えばさ、満員電車って環境問題?」

 佐野「うん、環境が悪いから環境問題だと思う。」

 小川「僕はそうは思わない。むしろ、効率良く人を運べているから、環境にとっていいことだと思う。」

 ‐廣野喜幸先生・村上陽一郎先生の環境リスク論に対する感想でも意見が分かれていましたよね。

 鎌田「そう、限りある資金で二人の命を助けるか一人の命を助けるかって言ったら、二人助ける方に使うべきだと僕は思う。」

 佐野「それって解決なんだろうか。」

 ‐そういう二者択一にならないようにするのが環境問題の解決なんじゃないの?二者択一の前段階に取り組むべきなのでは?

 鎌田「でも現実にはコストが有限だし、二者択一になってしまっているわけでしょう。」

 佐野「うーん、両方助けるのが無理っていうことは、環境問題は解決しないのではないか、、と僕は考えたりしています。」

環境問題観が広がった

 小川「僕は元々環境問題と言えば『地球温暖化』『森林破壊』などを考えていましたが、講義を受けて自分の環境問題に対する枠組みが広がりました。例えば、昔は、『マングローブを破壊してエビ養殖をする』というのが環境問題だと思っていましたが、今は、『エビの養殖をやめてほしいが、養殖場で働く人の生活も懸かっている。じゃあどうしたらいいか?両立させる道はあるのか?』というような問題も環境問題だと思うようになりました。貧困問題やフェアトレードなど、昔は環境問題だと思っていなかった問題もピンとくるようになった。」

 ‐すばらしい展開だと思います。今年度の講義は受講生の環境問題感を問い直すことにも成功したみたいですね。

 鎌田「作った側として、一年生がいろんなことを吸収し、また来年も講義をやりたいと言っていることが嬉しいです。エコブームを問い直す作業はこれから受講者にやっていってほしいと思っています。」

来年度に向けて

 ‐来年度のテーマ講義の計画も進行中ですよね。

 田中「講義を通して、多様な視点、多様なアプローチを知って欲しい、同時に、単純な図式では捉えられない環境問題の複雑性を知って欲しいと考えています。また、テーマ講義を作っていく過程でそれぞれの環境問題観をぶつけ合い、互いの知識や考え方を吸収しながら成長できたら、と思っています。」

 佐野「各先生が今やっていることは、わかる。でも『今やっていることを通して最終的にはどうしたいのか?』『どうしてそれをやることに至ったのか』『何を目標としてやっているのか』を知りたいと思うんです。講義を通して、『環境問題って何?』『ほんとに解決できるの?』そこまでたどり着きたいなあ。」

 「環境の世紀」も11 回を数え、出講される先生、多角的なトピック、ロールプレイング等工夫を凝らしたゼミの形式、そして何より講義を担う1,2 年生世代の時代背景など、OB/OG 世代のそれとは明らかに変化しつつあるのを実感した。自分の時とは一味違ったテーマ講義を体感しに、来年度は皆さんも一度駒場を訪れてはいかがだろうか。

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