第4回講義内容
5月12日
「フィリピンのスラムと社会的環境」
―マニラの首都圏のスラムと固形廃棄物処理業者の事例から―
教 官: |
中西 徹 |
所 属: |
東京大学大学院 経済学研究科現代経済専攻 |
配布物: |
なし |
講義内容
<目次>
・農地改革(マルコス政権)―土地なし農民の失業
・金融機関の投資―国内向け投資が少なく、国内産業が育成されない―職がない
・直接投棄方式の処分場―廃品回収人(scavenger)の移住
スモーキーマウンテン(1993閉鎖)の周りに2万人居住
スモーキーマウンテンの閉鎖、衛生埋め立て方式の処分場の増設により廃品回収人は失業
ゴミ処理の公職(メトロ・エイド)がスラムの人々の主な職業
・マニラに流入する人々は主に貧しく、農地改革が進んでいない地方(東ビサヤ州など)の出身者が多い。
・廃品回収業でも、東ビサヤ出身者は東ビサヤ出身の仕切屋が車などの手配をし、彼と契約する。
1993年より始められた廃棄物処理計画でJICAはトラックを提供し、これは効果的だった。
自然環境だけに目を奪われていると、現地の人の生活を忘れてしまう。
- (学生)
スラムをなくすべきだと思うが、先生はどう思うか?
(中西先生)
スラムの中にもそれなりに人間関係・生活が形成されているので、強制的になくすのはいけない。徐々に回収人の数は減ってきており、工場労働者などへの転業はうまくいっている。
- (学生)
日本の農地改革との違いについて
(中西先生)
「耕作している人に農地を与える」ことを目的としているため、田植え・除草・稲刈りをあちこちで手伝う土地なし農民には土地が手に入らない。
- (学生)
バナナ、ナタデココについて
(中西先生)
農地改革は稲作している中小地主が対象。換金作物の農地は大地主が所有していて、加工・運搬・販売など工程ごとに労働が分かれているので、農地改革ができなかった。プランテーション労働者と稲作の小作人の賃金はそんなに変わらない。
- (学生)
日本からはどのような援助が考えられるか?
(中西先生)
相手国の養成があって初めて対応するため、企業やコンサルタントに牛耳られる可能性がある。民間のNGO、現地のNGOとタイアップすることを重要視しなければならない。