中国・三峡ダム現場見学

2005年3月、工学部社会基盤学科の学生、教員有志で中国見学旅行を行った。この旅行は香港のインフラ建設現場および三峡ダム工事現場を視察するものである。これは教員の発案によって企画されたカリキュラム外のプログラムで、新三年生を主な対象としている。今回は三峡ダム現場見学の様子と感想を報告する。 【文責 11期・田村康一郎】

ダムの概要

写真1三峡ダムは長江中流の湖北省宜昌市に建設中で、上海への電力供給や下流の洪水調整などを目的としている。2009年に完成すれば、日本にあるダムの総貯水量の2倍もの貯水量を持つ巨大ダムとなる。これに伴う水没によって、生態系や景観、史跡の消失、何百万人もの住民移転が問題となっている。
見学時は2003年から始まる第三期工事の最中で、右岸側の工事を残すのみとなっていた。

現場を見学して

写真2ダム本体を見る前にまず驚いたのが、工事のためのインフラの巨大さである。最寄りの空港からダムのある町まで、バスで一時間ほど移動したのだが、その道路はダム工事のために整備したものということだった。また、町に着くと作業員のための宿舎や資材置き場が広がっていた。ダム本体の影響はよく取り上げられるが、それ以外にもこういった大きな影響があることを実感した。

そのようなことを考えつつ、いよいよダム本体の見学である。最初は展望台から全体を眺めたのだが、思ったよりも大きくないという印象を受けた。それは、日本のダムのように山間部にそそり立っているのではなく、大河に横たわっていて高さが目立たないためであろう。しかし、工事に参加している日本の建設会社のご好意でダムの天板の上に特別に入れてもらっていざそこに立ってみると、自分の立っている構造物の巨大さに息を呑んだ。見学時にも工事は行われており、実際に人や巨大な機械が作業しているのを間近に見ることができた。

ダム湖のほとりには、移転住民のための町が造成されていた。この事業によって何百万人もの人が移転を強いられたが、中国政府からは十分な補償が行われているようだ。また、ダムによって渓谷の景観が消えてしまうと言われていたが、すでに記念資料館や土産屋の類が存在し、逆にこのダムを観光名所にしようという中国人のしたたかさも感じることができた。自然環境の損失についても、ダムで発電される電力を火力発電や原子力発電で代替した場合と比較すると、その影響は小さいと言われている。大水害を防ぐこともできるという。

まとめ

写真3実際に現場を見てガイドや日本の建設会社スタッフの話を聞くことで、このプロジェクトの合理的な側面を知ることができた。しかし一方で、下流の電力をまかなうために上流で大きな犠牲を払わなければならないことに対し納得できない思いも残った。
今回の見学旅行では、報道からでは分からないプロジェクトの多様な側面を知り、開発の光と影を自分の目で見られたことが大きな収穫であった。

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