環境の世紀VII  [HOME] > [講義録] > 4/28 「人間と自然−二次自然の持続性」

HOME
講義録
教官紹介
過去の講義録
掲示板
当サイトについて


講義録



人間と自然
 ―二次自然の持続性

4月28日 武内和彦


1 自然のシステム

1−1 遷移

 自然には2つの移り変わり方がある。

  • 一次遷移・・・溶岩などの大地にやがて植物が生えて、腐葉土ができ、森林ができるという過程
  • 二次遷移・・・人間が木を切った後に「自然が元に戻ろうとする」過程

 これらそれぞれの遷移に対しての自然を、原生自然と二次的自然と呼ぶ。日本国土の中では、二次的自然の方が圧倒的に多い。

武内和彦

1−2 更新

 森には「若返ろう」とするシステムがある。遷移が進んだ古い森でも、老大木が倒れて日光が差す空間ができ、そこからまた新たな遷移が始まる。そうして世代が置き換わることを更新と呼ぶ。人間が自然に手を加えるということは、更新を助けることになる。




2 自然の種類

2−1 自然の分類

自然の分類

2−2 人工的自然

 人間の希望通りに作り変えた自然のこと。素材、生き物、生態系、景観などの要素がある。例えば素材ならば、木製の机やいすなど。人工林とはスギ林やヒノキ林など、人間に役に立つ同一種類の林のことを指す。

質問の様子
講義中での質問

2−3 原生的自然

 人間の手が全く加わっていない自然。今や日本では完全な原生林はない。しかし、原生林に近いと言われているのは、白神山地のブナ林、屋久島のスギ林、沖縄のスダジイ林などである。

2−4 二次的自然

 人間が手を加えながらも、まだまだ自然の再生能力が残っている自然。昔の武蔵野の雑木林(今の渋谷郊外)などがこれに当たる。人間と自然がうまく利用し合える関係が保てる。




3 二次的自然としての田園自然

3−1 二次林のサイクル

 武蔵野の雑木林は人間が手を加えることでサイクルしていた。

二次林のサイクル

 このように自然が若返る萌芽更新が行われており、半自然生態系が保たれていた。

3−2 雑木林の減少

 1960年代から日本では薪や炭を使わなくなり、また農業用の肥料も科学肥料に変わったため、次第に雑木林の管理がされなくなった。その結果遷移が進み、雑木林がシラカシの常緑林に変化しつつある。

3−3 春植物の危機

 春先の雑木林に咲くカタクリなどの草花を春植物と言う。春植物は、温度が高くなってから、雑木林の木々が葉を出すまでの約二週間の間に太陽を満喫し、花を咲かせる。しかし、雑木林がなくなりシラカシの常緑林になってしまうと、春植物には日光が当たらない。今、春植物は絶滅の危機に瀕している。これらの植物は人間がいる前はどうしていたかというと、氷河期で寒かったため、常緑林まで遷移しなかったから生き残ってこれた。一度人間が手を加えた自然は、人間を必要としているのだ

3−4 二極分化する日本の自然

 現在の日本の自然は、量こそ減ってはいないものの、質の面では大きく悪化している。人間の管理不充分によって野生に戻りつつある自然と、完全に人のペットと化した都市の自然。この二極分化が日本の自然の問題点である。




4 二次自然を基調とする循環型社会の形成

4−1 市民参加による里山管理

 都市の拡大によって人間と自然が近くなっている。そこで、人々が自分たちの手で下草を刈ったり、土をきれいにしたりすることで、身近な自然が守られる。また、そういった管理をすることで、埋土種子(芽をだす機会を長年土の中でうかがっている種子)がパッと花を咲かせたりと、成果が肌で感じられ、人々もより自然を身近に感じられる。こういった市民による里山管理が求められている。

ディスカッションの様子
講義後のディスカッション

4−2 バイオマスとしての二次的自然

 現在放置されている自然を、バイオマスとして復活させようという動きもある。

  • CO2を固定し、蓄積するという木の役割を見直す。
  • 曲がった木でも、組み直して修正材として利用する。
  • 木片をはじけさせて(ポップコーンのように)、家畜に食べさせる。
  • そのはじけた木片をプレスして板にする

 など、伝統的技術に変わる先端的技術の利用も今後期待できる。



Top
Back Next