ドイツ環境報告

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→「ドイツと環境問題」報告書PDF(PDF:781KB)

活動紹介

駒場祭で「ドイツと環境問題」を展示

駒場祭展示の様子 2000年11月24日(金)より26日(日)に、東京大学駒場キャンパスで第51回駒場祭が開催され、環境三四郎は「ドイツと環境問題〜フライブルクとマインツの事例を通して〜」という展示を屋内教室で行った。この展示は、学部1~3年生13人が9月下旬に見学や調査のためにドイツへ研修旅行に行き、現地調査で得られた結果をまとめたものである。駒場祭期間3日間で450人に上る来場者が展示に訪れた。積極的に質問をする人もおり、展示内容への関心の高さがうかがえた。

 「環境首都フライブルク」など、環境政策が進んでいるというイメージをドイツは一般に持たれている。このイメージに対し、実際はどうなのかという思いから、現地へ行き実際の姿を見る目的で研修旅行は企画された。そして、「進んだ取り組みでも、様々な問題がある。」(2年徳田顕人さん)、「本にあるような良い状況だけではない。」(3年沢千恵さん)といった、ドイツで見聞きした実情を多くの人に伝えたいと駒場祭での展示が企画された。

 展示は、壁に説明の文章と多くの図や写真が貼られているのに加え、パソコンでの現地撮影ビデオ鑑賞ができるようになっていた。また、現地のパンフレットやレギオカルテなどの実物が置かれ、入り口には「環境的国籍診断」という心理テストが貼られ、関心を引く工夫が多く見られた。

ドイツの現状は

 展示はフライブルクとマインツの訪問した場所ごとでまとめられ、フライブルクでは「交通システム」、「ソーラーエネルギー」、「環境教育」、「緑の党とBUND」、「黒い森と酸性雨」、「市民の意識」、マインツでは「清掃センター」の項目に分けらえていた。ドイツでの見聞した事柄に加え、日本の現状も書かれてドイツと日本との比較が随所でなされていた。

 フライブルクは大学都市、観光都市と知られるが、原発反対運動からの1970年前後からの環境問題への取り組みや1992年にBUND(環境NGO)に「環境首都」に選ばれるなど環境都市として知られている。

 「交通システム」は公共交通機関の利用が促進されている状況として、発達している路面電車やレギオカルテ(地域環境定期券)という近郊の近距離線が乗り放題となる定期券が説明されていた。また、自転車専用道路の整備による自転車が多く利用されていることが述べられていた。この他、脱車や省エネによる環境負荷低減を図るヴォバーン団地の取り組み、カーシェアリングシステムが紹介されていた。

 「ソーラーエネルギー」では、フライブルク市で大きく行われているソーラーエネルギー利用のプロジェクトが多く紹介されていた。太陽光発電パネルを生産する工場やソーラーパネルの組み込まれたフライブルク中央駅、助成プログラムや、訪問先のドイツ全土で唯一の太陽光発電技師養成学校「リヒャルト・フォーレンバッハ実科学校」など、ソーラーエネルギーの利用や技術者育成に力を入れている。

 「環境教育」では訪問したフライブルク郊外の総合学校で行われているECO-WATT Projectが紹介されていた。建物設備を改善して省エネを図るとともに、省エネのクラスごとの競争や水の使用量のグラフ化、「CO2削減の日」の設定など生徒自身が参加して、取り組みの成果を実感できる環境教育がなされている。

 「緑の党とBUND」では、現地でのインタビューの結果を見られた。緑の党のバーデン・ヴェルテンベルクブルク州議とフライブルク市議へのインタビューでは、ドイツでの緑の党の、環境政策の牽引役という位置付けや、フランスからの電力輸入による原子力発電全廃の現状などが話されていた。BUND(ドイツ環境自然保護連盟:環境NGO)の環境教育施設エコステーションの代表へのインタビューでは環境首都と騒がれても市民全員の意識が高いというわけではないこと、自然を感じることで環境意識を高めることを実行していることが話されていた。

 「黒い森と酸性雨」では、実際に黒い森を散策した様子が報告されていた。顕著な被害状況は見えなかったが、森の健全とはいえない様子や森林保護が行われることが自然なことであることを感じられたということである。

 「市民の意識」では、フライブルク郊外に住む家庭を訪問し、高校生とその母親にインタビューをした結果がまとめられていた。インタビューでは環境首都と呼ばれることへの疑問や、一般の人々や政府にとって経済に対して環境問題の重要性は低く、人々の環境意識が特別高いわけではないと冷ややかな見解を示していた。

 マインツの「清掃センター」では、訪問したマインツ市にある廃棄物処理の民間会社の事業内容や廃棄物の処理方法などが紹介されていた。

 研修旅行や展示の企画運営の中心となっていた徳田顕人さん(教養学部2年)は「良いシステムや制度があれば、かなりうまく機能する。」ことを感じたそうである。また、「環境教育の現場では、「良いことをしましょう」という思想よりも、実際に行われること、結果を重視しているように見えた。たとえば、競争させたり、省エネで浮いたお金をを学校に還元することにしてインセンティブを働かせるなど。これがドイツの合理主義なのかなとも感じた。」と述べている。

 実際に現場に行くことで、本に書かれていない現状やその背景を知ることは大変重要なことであるといえる。また、本当の現状に少しでも近づくことは日本との比較を行う上でも肝要であろう。また、ドイツの進んだ取り組みを目の当たりにして、日本での行動の不十分さを感じるところが多かったようである。

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