ISOP

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ISOPの概要やエコルームの様子、そこで用いられた製品などを紹介したサイト。

活動紹介

「どうぞ、読んでください」をA4 の冊子を手渡された。タイトルは環境調和型生活ヴィジョン化プロジェクト。今回取材する井村勇気さん(9 期:文科1 類2 年)中心に進めているISOP プロジェクトの企画書だ。

ISOP は、三四郎内でよく言われる「学生だからできること」を実際に社会に対して示そうとするプロジェクトだ。プロジェクトの問題意識は、「多くの市民は環境への意識を日常生活における環境負荷低減の実践に結び付けられていない」というものだ。日常的に実践しづらいこと抜きに、持続的に実践できる環境にやさしい生活を具体的提示を目指す。(記者:竹内文乃)

発足の背景と問題意識

井村さんがISOP の構想をはじめた一番のきっかけは2001 年度に参加した公共事業プロジェクトである。公共事業プロジェクトの、学生として社会に働きかけるという姿勢に非常に共感したという。その時は、学生として高尾山・圏央道をとりまく政治の世界に切り込んだが、それぞれの立場にある関係者の対立が前面に出てしまい、議論はなされるが解決には結びつかないという問題点を抱えていた、と井村さんは当時の問題意識を振り返る。今度は「協調」をテーマとして学生として、社会に対して働きかけたい、その思いからあたためはじめたプロジェクトがこのISOP であった。

そこで目をつけたのが企業と市民の関係の現状だった。企業が環境負荷の低い製品などを開発し、積極的に環境問題に取り組んでいても、そのベクトルがちゃんと市民に届いているか?市民はその情報を商品購入の際の基準として活かしているか?問題意識が湧きあがってきた。そして、市民の側から企業に手を伸ばしたて双方を結びたいと考えた。学生としてできること、それは市民に企業からの情報を伝える役割を担うことではないだろうか。何かを調査・分析する、そんな活動にも魅力がある。しかし、学生ではその筋の専門家にはかなわない。その部分は第三者の権威を借り、どんな環境配慮商品があるのか、それを調査・検討して市民に再提示する、そのTranslator 的役割なら担えるかもしれないと思ったと、井村さんは熱く語ってくれた。

企業の宣伝になってしまうなど、学生としての中立性については?という問いに対しては、中立性を保つことは難しいだろうが、中立性のために情報をぼかしてこんなのもありますよ、とただ羅列しても市民にとっては何のメリットにもならないと思う。市民にとってプラスかマイナスかをまず考えたいと答えてくれた。もちろん恣意的にならないために第三者の権威を代替することを検討し、エコマーク事務局に足繁く通ったそうだ。

現在の目標 --駒場祭での発表--

ズバリ、目指す生活を駒場祭でモデルルームとして提示することだ。エコマーク商品は文房具など分野が限られていて家具などにはほとんどない。その弱点を個別判断で補い、環境に優しい製品だけでできたモデルルームを、環境に優しい暮らしの提案として市民に提示する。現在は企業に連絡をとって製品を借りるめどをつけたり、その場で行う意識調査アンケートや配布するパンフレット作成に追われている。モデルルーム自体の宣伝方法を考えたりとやることにはきりがないと井村さんはいう。

現在の問題点と最近思うこと

構想は、ある程度よいものができたのではないかと思っている。一番困っているのは時間がないこと!また、最初のうちはメンバーが少なくて苦しかったが、今ではやる気ある1年生が興味を持ってくれて、意欲的な活動できている。メンバーの仲がすごく良くて協力体制もしっかりできているとのこと。

また、井村さんが最近考えていることについて聞いてみた。生活というのは、ある程度パッケージ化されたものなのではないだろうか。パッケージ化することによって「環境にやさしい生活」を魅力的に売ることができるかもしれない。誉められたものではないかもしれないが、マーケティングをして商業路線にのせる、それが環境問題の具体的な解決に対して近道かもしれないと思ったりもする。

井村さんの熱い思い

ISOP がキーワードの一つとしていることに「鏡(かがみ)であって鑑(かがみ)ではない」というものがある。「鏡」というのは、ISOP が提示する、ライフスタイルの変更を要求しい「環境に優しい生活」は、普段の生活をそのまま投影できるものだという意味。「鑑」というのは、理想的な「環境に優しい生活」のビジョンのことだ。

ISOP への懐疑として、「身の回りのモノだけを環境配慮製品に変えただけでいいの?」「色々ある環境配慮製品からどうしてこれって決められるの?」というものがあると思う。ライフスタイル変更を要求する「環境に優しい生活」を提示したり、企業の提示する数値とにらめっこすることにどれだけの意味があるだろうか?時間やキャパシティという有限資源を使って、環境三四郎の活動をしている以上なんらかの優先順位をつけることは避けられない。その際は「プロジェクトの目的」と「自分たちがやる意義」を基準としたい。

そこでISOP は「鑑」を目指さないと決めた。ISOP の目的の先に、「環境配慮製品の市場を広げることで、企業に環境負荷低減のインセンティブを与える」というものがある。つまり、ISOP の提示に対して、企業が「もっといい製品を作れる」として、より優れた環境配慮製品を作るようになればと思っている。

したがって、ISOP は、自分たちが提示した「環境に優しい生活」が古くなる(陳腐になる)ことを目的としている。自分達の提示がベストであるかどうかの確信は別に、あえてたたき台として提示することで、「環境に優しい生活」が量的にも質的にも充実するきっかけを作ることが自分たちの役割と考えている。


 「鑑」ではなく「鏡」を。このキーワードは、ISOPがこれまで目指し、積み上げてきた活動を最もよく象徴している。井村勇気さん(9期:文科一類2年)を中心とするこのISOPプロジェクトは、学生としてできることを実践しようと、企業と市民との関係に着目し、一般市民に面倒を伴わないで今すぐできる「環境にやさしい生活」を具体的に提示する活動を行なってきた。そのひとつのまとめとして、駒場祭では「えこるーむ」の展示がなされた。今回、井村さんに駒場祭での成果を取材した。 【記者:渡辺善敬(8期)】

駒場祭での生活提案

 ISOPが提案したものは、「鑑」としての環境問題解決のための理想的な暮らしの提示ではない。ふだんの生活をありのまま投影する「鏡」の提示である。この「鏡」を通して、直接的には環境配慮生活は窮屈なものではないということ、間接的には自分たちがいかにたくさんのものに囲まれて生活しているかということを印象づける。

 その「鏡」こそ市民が環境にやさしい生活の実践に踏み出せる第一歩なんです、と井村さんは熱く語ってくれた。「えこるーむ」では市民が「鏡」をイメージしやすいよう、リビング・キッチンといった生活の場面ごとに環境にやさしい商品が紹介されていた。

 展示では、製品の種類が驚くほど多かった。小さな文房具から、歯ブラシ、家具、衣類にいたるまで、リビング・書斎・キッチン等、生活の場面ごとに多数展示されていた。

 部品交換可能にすることで、長寿命にした椅子や太陽光による電池充電機など、実用的ですぐに利用できそうなものが目を惹いた。体験型の工夫も凝らされていた。松下の蛍光ランプ展示コーナーでは、点灯時に併設された電球と蛍光ランプに触れることで、蛍光ランプが電球よりも放熱が少ないことを感じ、蛍光ランプがいかに熱エネルギーを無駄に放射せずに長持ちするかを実感することができた。生活の場面ごとに商品を展示することで、生活者の視点を大事にしている。「あ、ここではこの商品を使えばいいんだ!」といったように、市民が生活と商品を無理なく結びつけられる効果があると感じられた。

 発想の転換が見られる商品も多く注目を集めていた。特に目を惹いたのは、シャワーのもち手の部分にワンプッシュの止水ボタンがついたものである。まさに便利さと環境配慮が融合したものである。いちいち蛇口をひねることなく流水止水の切り替えができるのは使いやすく、水も節約できる。環境を志向することが他の価値とも調和可能であることがよく伝わってくる。

 また、「対話」にも重きが置かれていた。えこるーむではISOPメンバーが来場者に商品や展示のコンセプトを丁寧に説明・解説する姿が必ず見られた。衣類コーナーでは同じペット原料でも肌触りが違うものを多くそろえられていたが、来場者はひとつひとつの商品の説明を聞く中で、驚くと同時にペットボトル原料の衣類への関心を高め、イメージを変え、身近なものと感じている様子が伺えた。

 フェイス・トゥ・フェイスでの対話は来場者にとって環境配慮商品を自分の生活の一部と認識する助けとなったのではないか。他方、プロジェクトメンバーにとっても、一般の人がどのような視点で環境配慮商品を見ているのか理解するよい機会になったという。

 苦労したことも多かった、と井村さんは話してくれた。商品収集が大変だったようで、百点を超える商品を各企業をまわって収集したことは多くの時間と労力を要したそうだ。しかし、生活のすべての場面を包括的にコーディネートできなかったことが残念だったという。企業には環境保護中心主義とみられ、他方エコロジーの運動家にはビジネス志向と誤解・批判され板ばさみにあうこともあった。活動を通して、現在のさまざまな環境保護活動グループの中で、目的・手段の一本化がなされていないことは問題なのではないかと感じたそうだ。

 その分、得られたものはかけがえのないものであったという。何といっても多くの人が訪れてくれたこと。来場者との対話からいい反応が返ってきた。ひとりひとりの胸にISOPの環境配慮生活のイメージが伝わったのは間違いない。一見環境に無関心に見えるコギャル風の女子高生が、メンバーの説明に驚きと納得、喜びを見せていたことは印象深かったそうだ。何もないところから積み上げたこの活動は、人とぶつかる活動・現実を直視することを通して、目を足を外に向けメンバーの視点を広げ、相対化することができた。一年生にとっても多くの経験を積み、企画力・想像力・交渉力などのノウハウを得ることができた。

 井村さんはこのように展示を実り多いものだったと振り返る。メッセージとして、地道な仕事を積み上げてくれた他のメンバーや、多くのアドバイスをくださった先輩方、活動に協力してくださった各企業の方に感謝せずにいられない、みんなのおかげですと話してくれた。

取材を終えて

 展示会場全体にチームワークのよさ、工夫を取り入れようという想像力、環境問題の視点を無理なく伝えていこうという熱意、が感じられ、気持ちよく・自然に環境配慮生活のイメージを吸収できた。あくまで理想論でなく、実践としての「鏡」にこだわり、生活者の視点から環境配慮生活のイメージを形にしたこのプロジェクトは、今この瞬間にも商品を買おうとする来場してくれた人たちの視点に、新しい選択肢を投影させているに違いない。

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