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環境の世紀X ゼミ第八回目

ディスカッション

先生の提示した『「100年後、500年後、2000年後といった遠い未来の環境がどうなっているか」、を考えるためには、知識、情報、境界条件など、何が必要と思いますか。できるだけ具体的に指摘して下さい。』という問いに対する答えを3グループに分かれて話し合った。

1グループ

<問いに対する答え>

これからの環境政策とか、過去・現在を知るとか、価値観を変えるとか。

抽象的だったので、まず未来の地球環境をを知る上で必要なツールは何かということを考えた。
広い視野を持たなければならないので、地質学とかが必要なのではないか。
最終的に未来を知る上で必要なファクターは何かを具体的に挙げてみた。

人口
地殻変動
化石燃料の量
気温
生態系
耕地・森林面積
ごみの量
平均勤労時間
出生率
インターネット普及率
車台数
人間が移動できる距離
火山発生率
自殺率
会話時間
美術館・博物館数
平均寿命
平均睡眠時間
電気消費量
人口の偏在
地球外生命体の存在
戦争の数
異なる生物とコミュニケーションできるのか

まとめてみたら、文化レベルとかライフスタイルとか、また抽象的になってしまった。
出来るだけ独立な要素を抽出して挙げてみると、まず人口が大切だと感じた。

2グループ

<問いに対する答え>

人間とかその他全ての活動を知って、活動の影響を知ること。
たくさんの人が広く、包括的に考えるということ。
情報をさらに透明性を高めて皆で共有すること、など。

大分抽象的なので、未来を知る上で必要なものを人間自身についての面と、 地球とか物理的な面についてに分けて考えた。

●人間自身について
人間は基本的にこういうことをするのだとかいうことを知れば、今後の動向も見えてくるのではないか。 つまり、人間社会全体の意識の流れ(例えば、希少価値はどういったところにあるか。生活様式。先進国と途上国の関係。またその反映の度合い。戦争。不景気。教育など)

●物理的なことについて
人口
CO2濃度
使用エネルギー源
利用可能な水について
フタル酸エステルなど問題になっている物質がどのくらいあるか
学問体系がどういうものになっているか
資源残存量、利用方法
移動手段がどうなるか
海水はCO2をどれだけ吸収するか、また逆に放出するか
宇宙にごみはどれほど捨てられるか、またそもそも宇宙に捨てられるのか
太陽の動向について、太陽の活動周期
色々な変数があって、それをまとめられるコンピューター技術
国連の位置
タイムマシン

3グループ

<問いに対する答え>

近い未来を予測して、予測通りになったら未来の人はそれを受け止めて如何行動を変えるのか?を考慮したうえで予測する。
新しい学問領域
広い知識
現在・過去を研究して未来につなげる
正確な情報

抽象的になったので、もっとブレイクダウンして具体的なことに移って列挙していった。

●エネルギー関係
発電効率
電力消費量
ソーラーエネルギー

●農業関係
食糧生産量
土地の質
農業技術
品種改良
地域によって食生活が変化するかもしれない
ごみの出し方というか、ネットーワークがもっとうまく出来たら余分なごみが出ない

●戦争関係
人の命の価値観、心理学
戦争の形態の変化
軍事費
交通の発達

安井先生の総括

なかなか問題の意味を理解してもらえなかったようだが、2グループの「人間」・「地球」というような分け方を期待していた。いろいろな問題があるが、体系学的なことを見てほしかった。

地球は太陽が支えている星。太陽のエネルギーは実に莫大で、太陽が毎日くれているエネルギーを使って我々は生きている。そのほかに46億年の過去のエネルギーの遺産。地面を掘っては食っている訳です。太陽のおかげで雨、いろいろなことが起こるのだが、その能力は泉型・貯蓄型の二つがある。例えば、水に関しては、降水量がどのくらいあるのかは大体分かっているのだが、どこにどのくらいの頻度で降るのかは難しい。水問題が国際問題になって、水戦争が起こりそうだ。穀物1t作るのに水1000t必要と言われている。飲み水なんて高が知れている。バイオマスエネルギーを将来やっていこうとすればどうなのか。また、宇宙衛星を飛ばして太陽光発電しようという計画もある。宇宙空間からエネルギーの伝達はマイクロウェーブでやるのだろうが、大体2.45GHz(電子レンジと同じくらい)。これを人間様が浴びるとどうなるのか?…新しい環境問題になるかも知れない。

それと、原子力の話がなかった。ウランを固形燃料で使う分にはあまり害にはならないが、高速増殖炉の場合は、やはり問題になる。それでも、おそらく300年後ぐらいには動いているのではないか。あと、エネルギーは本当に必要なのかどうか。例えば、暖房・冷房がなければ死亡率は格段に上がる、そういう意味では必要だが。空気をどうするか?皆さんはあまり心配してないようだ。太陽光の活動が10億年後には50度を超えて二酸化炭素はなし。で、植物がいなくなって、10億年後には人類もいなくなる。だが、ついこの間ホモサピエンスが生まれたばかりだから、そんな先は考える必要もないだろう。

もう一点、経済活動は重要だ。富とは何か? こういったことをトータルに見た時に、これからの環境学とは何なのか?ということを考えてほしかった。そのためには、

人間活動=人口×(一人当たりの活動)

人口はどの位になるか、一人がどのくらい活動をするのかで、負荷量が決まる。どのくらい地球は外乱を受け入れられるのか。極めて単純なモデルだが、少し考えてみると、これからの環境学のやるべきことが見えてくる。例えば、ケンカをどのくらいやるのか?徹底的に戦争ということになると、「核の冬」がいちばん怖いシナリオだ。原子爆弾を何本も使うと、塵が大気空間に広まり、気温が下がって、あまりいいことは起きない。だいたい戦争になる。

あと、交通の発達で、SARSの話題が出ていたが、この手の感染症に人類は勝てるわけがない。これからもSARSのようなことは起こるだろう。しかし、インフルエンザのほうが恐ろしいと思う。SARSはスーパースプレッダーという十数人が持つ非常に強いウイルスが人を殺していったのだが、エボラ出血熱ウイルスにしても、あまりに強すぎて全世界的に流行できない。患者が死んでしまうからだ。感染症はこういう終わり方をするものだ。それにしても、SARSは日本にはもう入っているんじゃないか。昨日ひいた風邪は…(笑)というわけで、決定的に感染症には勝てないが、完全に負けるとも思えない。全員は死なない。

そんなこんなで、われわれの使う資源は、金属資源はリサイクルしてエネルギー的に使いまわすしかない。結局はエネルギー源が人間を決めるのだろう。まぁ、一瞬でよければたぶん、地球は200億人養えるのだろう。土壌劣化などが起きて何年続くかはちょっと分からないが。80億人ぐらいで留まってくれるか、200億人までいくかで全く違ってくる。日本は少し減りすぎですよね。

そんな話で、オーバーオールビューするためには、やはりブレイクダウンして、再度ジグソーパズルのごとくやっていくことで環境学が見えてくるのではないか、というのが今回のディスカッションの意図だった。


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