堆肥化プロジェクト

活動紹介

 堆肥化プロジェクトとは、駒場キャンパスの落ち葉を堆肥化して有効利用することを目指すプロジェクトである。 プロジェクト責任者の山崎翔子さん(14期:理科1類2年)にインタビューを行ったところ、堆肥化プロジェクトが、自然と触れ合える魅力的な活動であることが伝わってきた。さらに、駒場キャンパスに大量に発生する落ち葉を堆肥化することで循環させようという大きな目標に向かって今何が必要かを考え一歩一歩着実に進んでいる試みであることが窺えた。
【文責 11期・鎌田雄一郎】

普段の活動

切り返しの様子1  堆肥化プロジェクトとは、駒場キャンパス(以下、「キャンパス」)内に大量に発生する落ち葉をごみ袋に入れてただ捨てるのではなくなんとか循環できるように出来ないか、というアイディアのもと、キャンパス内の落ち葉を収集し適切に管理することで、堆肥(「落ち葉堆肥」という)として利用できるようにすることを目的としたプロジェクトである。
 秋に収集された落ち葉は冬にキャンパス内図書館脇の矢内原公園にある「堆肥BOX」(3m×3mの大きさ)に入れられ、春夏には「切り返し」という作業が行われる。「切り返し」とは、この落ち葉に空気と水を与えるためにシャベルでひっくり返したりホースで水をやったりする作業のことだそうだ。この作業によって、落ち葉を分解する微生物の活動をコントロールできるらしい。 切り返しをするたびに、日付、温度(落ち葉の内部は50〜60度と高温になる)、においや手触りなどの様子を、実験ノートに記録する。温度を測ることによって落ち葉が堆肥に変化するスピードを知り、水の量やぬかの量(栄養分になる)を調節するのである。「堆肥化プロジェクトを一言で言うと?」の問いに「切り返してます」と山崎さんが答えるように、「切り返し」がこのプロジェクトのメイン作業である。
 切り返しは隔週週末に行われ、その後にその日の作業についての報告会が開かれる。また、今年も去年に引き続き堆肥や菌や土に関する勉強会を行いたいと考えているそうだ。 現在作られた堆肥は駒場祭で来場者に配ったり、地域の団体に使ってもらったりしているとのことだ。

堆肥化プロジェクトの目指すもの

切り返しの様子2  キャンパス内に大量に発生する落ち葉の循環という目標のために、今年堆肥化プロジェクトが取り組んでいることは2つある。 1つめの取り組みは、「イチョウの堆肥化実験」である。秋には見事な黄葉を見せるキャンパスのイチョウ並木から発生する落ち葉の量は膨大である。キャンパス内に発生する落ち葉の循環を目指すのであれば、このイチョウの落ち葉の堆肥化を避けて通ることはできない。「イチョウ並木の落ち葉を全部循環できたらいいなあ」と山崎さんは言う。 しかし一般には、「イチョウは堆肥化に向かない」と言われている。この取り組みの目的は、その真偽を試してみることである。去年イチョウの落ち葉を他の落ち葉に少し混ぜて堆肥化を行ったところ、成分分析の結果イチョウなしの場合と比べてあまり違いは見られなかった。 今年は極端なケースとして、「イチョウのみ」「その他の落ち葉のみ」の2つの場合を比べてみるとのことだ。もし今年のみの成功を目指すのであれば極端なケースを試すのはベストな手段ではないかもしれない。しかし長期的に考えて、こうしたケースの結果も必要だろうということで、今年はイチョウのみでの作業をすることになったそうである。
 もう1つの取り組みは、「野積みによる堆肥化実験」である。野積みとは、要は「手を加えない」ということである。この取り組みのために、現在新しく堆肥化BOXを用意してそこに落ち葉を入れている。 現在のように少量の落ち葉を処理するのであればその全てに手を加えることはできるが、将来キャンパスに大量に発生する落ち葉を全て処理するということを考えたとき、できるだけ手を加えずに堆肥化ができたほうがよい。このような観点に立ったとき、野積みによる堆肥化実験は、将来を見据えた取り組みといえるのである。 以上の2つの取り組みに共通しているのは、今年だけの成功を考えた取り組みではなく、目指すべき将来像を見据えた上での取り組みであるということであろう。これは、メンバーがプロジェクトに通常2年間しか関わらない ことを考えると、注目すべき点であろう。

堆肥化プロジェクトの魅力

 堆肥化プロジェクトの魅力は何か、山崎さんに尋ねてみた。「体を動かして落ち葉と触れ合うことで、自然と触れ合えることですね。あと、気軽に参加できることです」と山崎さんは言う。現在切り返しにはプロジェクトメンバーであるないに関わらずたくさんの三四郎メンバーが参加しており、また、新入生も多いときには7人の参加があったそうだ。 また、最近は読売新聞に掲載されたプロジェクトに関する記事を読んでくれた方が切り返しの見学に訪れ、新しい農具をプレゼントしてくれるという嬉しい出来事があり、メンバーの士気もいっそう高まっているそうだ。 微生物に興味があり、農学部か工学部への進学を考えているという山崎さん。インタビューの最後に、なぜプロジェクト責任者になろうと思ったのかを聞いてみた。「好きだからです。堆肥に愛着が…」とのことだった。 壮大な目標を掲げつつ日々駒場の学生を引き付ける堆肥化プロジェクト、今後も目が離せそうにない。

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