環境の世紀14

「環境の世紀」とは?

東京大学の教養学部で正式な単位認定を出す、環境三四郎が企画に参画する講義。それが「環境の世紀」である。15年前から続けられてきた活動で、一回休止があったものの、2008年度冬学期の開講で14回目になる。2008年度の「環境の世紀14」は2007年度と同じく、冬学期に開講された。

本年度の講義の目的

講義の様子 講義の目的としては、環境の世紀が引き継いできた「環境問題を様々な分野から見る」という理念を軸に、「環境問題に興味はあるが知識がない人が、講義を受ける中で自分なりの環境問題観を形成して、それをアウトプットできるようになるような講義・ゼミ」ということがあった。

環境問題関連の報道は非常に増え、地球温暖化程度のことは誰でも知っている一方で、正確な知識は普及していないように思える。コンビニの夜間営業規制に関する論争、リサイクルや温暖化の是非に関する論争などを見ていても、それぞれの立場から主張がなされるため、環境問題というのをどういった枠組みでとらえればいいのかが非常に分かりづらくなっている。その枠組みを「バイオマス」という素材を通じて提供し、自分のものにしてもらうのが環境の世紀14である。実際には、「環境問題観の形成」と「アウトプット能力の向上」という2つの目的を達成するために、月曜5限の中人数の講義(40名程度)と月曜6限の少人数のゼミ(10名程度)に分けて行った。

講義

講義の様子2

バイオマスを中心に据えた3部構成で講義を行った。駒場の18号館ホールという、学術俯瞰講義以外は行ったことのない場所を使わせていただいたのは非常にうれしかった。

第1部「地球環境問題とバイオマス」第1回〜第3回

地球環境問題とエネルギー問題とのつながり、エネルギー問題と再生可能エネルギー、さらにはバイオマスのエネルギー利用とのつながりを講義する。地球環境問題という大きな枠組みから、バイオマスという本講義のメインテーマへと迫っていく。

第2部「様々なアプローチ」第4回〜第8回

バイオマスを窓口として見えてくる、環境問題につきまとう問題をトピック的に考える。ひとつの問題の背景に存在する様々な利害関係者やその主張を理解することで、現実への理解を深めていく。

第3部「政策・実践の現場から」第8回〜第13回

現実の政策に関わっている省庁の方々やバイオガソリンを販売している新日本石油(株)の方に講義をしていただく。第1部・第2部で学んできた視点を活かして、自分なりに実際の現実を分析できるようになってほしい。

講義の様子3

バイオマスというテーマが時事的過ぎた故か、ほとんどのトピックが燃料としてのバイオマスに集中してしまった。環境の世紀プロジェクトのメンバーとしては、バイオマスのマテリアル利用や森林に関する話題など、多様な側面を見させる講義にしたかったため、その点は失敗だった。講義内容に関しては、先生方の多忙さ、自分達の知識のなさ、などによりどうしても100%思いどおりにすることはできないが、どこまでそれに近づけていけるかが、講義としての環境の世紀の完成度を左右することは間違いないだろう。

ゼミ

ゼミの様子 それぞれの先生の専門に近い分野でディスカッション、ロールプレイ、ディベート、プレゼンテーションなどを行った。テーマは、事前に先生との相談の上で決定して、参考資料などを環境三四郎が集めた。ファシリテーターは環境三四郎のこともあれば、先生のこともあった。

10名程度の人数で、かつ強制的に参加が求められる授業というのは駒場ではほとんどない。自分達でディスカッションのテーマなどについて考え、実践し、先生方にコメントを頂く経験は、どこまで議題を詰めていけば活発な議論が展開できるのか、ということを考えるのに非常に役立った。履修者がほとんど環境の世紀メンバーであったことは残念な点でもあるが、自分達の成長という点ではこの上なく役に立つ授業だったのではないかと思う。

ゼミの様子2

課題として、先生方をいかに議論に巻き込んでいくか、表面的な議論でなくより具体的で生産的な議論を展開していくにはどうすればいいか、といったことを深く考えていく必要がある。

フィールドワーク

フィールドワーク 希望者を集め、千葉県香取市山田地区にある、バイオマスプラントへのフィールドワークを行った。バイオマスプラントで見学を行わせていただいたほか、バイオマスプラントの実際の運営をしている農事組合法人である和郷園でお話を伺った。また、大原幽学記念館という施設を見学させていただいた。

このフィールドワークには環境三四郎以外のメンバーの参加もあり、全体では学生が10名程度と、瀬川浩司先生(本講義担当教員)や飯田誠先生、山本光夫先生の教員3名での実施となった。このように様々な層の方に参加していただくことができたのは一つの成果だった。

課題としては、授業内容とのリンクの説明不足、またディスカッションの不足などが挙げられる。今後フィールドワークを行う際には、こういった点に気をつけ、活発な意見交換ができるようにするといいだろう。

文責:巻島隆雄(15期)

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