第11回講義内容

7月7日

「環境法の新たなる展開」

教 官: 淡路 剛久
所 属: 立教大学 法学部
配布物: なし

講義内容
<目次>

<講義内容>

1. 公害法の前史

1. 戦前の環境問題と環境法 ― 明治から第二次世界大戦(鉱山からの公害の時代)
特徴:深刻な公害問題が発生していたが、有効な公害対策も公害法もなかった
富国のための産業重視政策の下で、もし被害が出れば大体は示談で決着し、もし更にもめれば刑事裁判という形で扱われた(被害者の泣き寝入り)。

●足尾鉱毒事件
農業被害が生じて農民たちが東京に押しかけてくる
→騒擾事件として刑事裁判
→長期対立
→免訴
→谷中村、松木村の集団移転による問題の抹消
●日立煙害事件
行政指導による大口径低煙突の建設→ダメ(阿呆煙突と呼ばれて、即刻使用中止)
企業独自の気象の研究→ジェット気流の発見
→高煙突による高圧吹き上げ(新田次郎「ある町の高い煙突」)

2.戦後の環境問題と公害法の生成―戦後から1967年頃まで
特徴:公害法の萌芽の時期
自治体が公害対策を始める

●浦安漁民騒動(本州製紙、1958)
水質二法の制定
→一次産業と二次産業の対立と捉えられた→産業の相互調和
指定水域制度
●四日市喘息→煤煙規制法

2.公害対策基本法体系の成立―1967年から1970年代中頃まで

●公害国会、橋本道夫や加藤三郎の時代
●公害対策基本法改定、自然環境の保護
●縦割りからの脱皮→環境庁
●工場側との示談(被害者側が今後この件についての訴えを起こさないことを条件に賠償金を支払った)
→示談は被害者に不利に働いた
→裁判所が公序良俗に反すとしてこの示談を無効とした
→四大公害訴訟へ
●放置された公害→国の責任(企業群は共同不法行為)

3.公害・環境法の停滞の時期―1970年代中頃から1980年代末

●それまでは人格権に基づいた差し止め請求権→環境権に基づいた差し止め請求権へ
●アセスメント法案が(産業などの圧力により)後退していく
→下手に成立すると問題が生じたときの企業側の言い訳になるとして不成立

4.新たな環境法の展開

●リオ会議、ブルントラント委員会
●廃棄物処理法の改正とリサイクル法
●種の保存の概念の導入
●NOx総量削減
●包装廃棄物リサイクル法
●環境基本法の理念
-環境権に近い概念
-維持可能な発展('SustainableDevelopment'の訳語。「持続可能な開発」の語感に含まれる経済的成長至上主義的な響きがないとして、都留市や宮本氏が提唱・使用している。)

5.課題

●環境基本計画をどうやって実施するか?
●アセスメント法をどうやって成立させるか?
●経済的手段をどのように用いるか?(環境庁と通産省のずれ)
●環境基本法の理念をどう実現していくか?