第12回講義内容
7月14日
ディスカッション
教 官:
高野穆一郎
所 属:
東京大学大学院 総合文化研究科広域科学専攻 広域システム科学系
パネラー:
阿部 寛治(東京大学大学院 総合文化研究科広域科学専攻 広域システム科学系)
北脇 秀敏(東京大学大学院 工学系研究科都市工学専攻)
小宮山 宏(東京大学大学院 工学系研究科化学システム工学専攻)
松原 望(東京大学大学院 総合文化研究科国際社会科学専攻)
配布物:
なし
講義内容
<目次>
ディスカッション
<講義内容>
ディスカッション
(高野学生(司会)) 今回は今まで扱ってきた諸問題についての総合的なディスカッションを行います。
(教官紹介を行う)
レポートをもとに環境問題は各専門家が自分の
(田村) 専門家同志で意見が違って正直がっかりしている。このままではダメだ。Sustainable Developmentなど言葉いじりをしているだけで、具体策がない。
(司会) 質問ありますか。
(学生1) 先生が言ったことと矛盾することを言っている人もいる。
(司会) それでは小宮山先生。
(小宮山先生) 科学技術者間の議論は十分じゃない。私は政策については言わず、技術について言った。この2つは次元が違うので政策のことについて述べなかったからと言っても矛盾しているわけではない。地熱発電が50〜100年で実用できるようになると考えるのは甘いが、有望と考えている人もいる。それは技術に関する意見の違いだ。
(司会) 阿部先生は他の学生とディスカッションした経験があるので、それをふまえてお願いします。
(阿部先生) 意見がバラバラなのは当たり前。何が正しいかは自分で判断して欲しい。たくさんのグループができ、研究が進んでいて、意見もバラバラではなくなってきている。「今のままで何が困るんですか」という人もいる。「困る」という人もいる。先進国並みの生活を人類みんながすると、地球が持たない。生態系に悪影響が出る。
文科の人は技術が解決すると思う。理科の人は技術ではどうしようもない、社会システムの変革が必要だと考えている。意見が対立しており、危機感がない。
(北脇先生) 私は、開発途上国問題について勉強している。環境衛生の面から述べる。スローガンを作り、人々を運動へとあおっているが、Sustainable Developmentは各立場により解釈が違い、批判されもしている。各専門家が力を合わせる必要がある。日本はこれが弱く、失敗しているが、改善されつつある。
(司会) 環境問題は社会の潮流を変える必要があり、それに悩んでいる。
(学生2) 危機感をみんなに持ってもらうため、研究者がデータを国民に見せるのがよい。環境問題のブームが消えている。増加するのか?
(小宮山先生) ブームは必ず消えるが、研究者は着実に増えるだろう。
(阿部先生) 目に見えるものはよく分かるが、マクロなことはよく分からない。温暖化などの問題もどう影響が出るのかよく分からないことが多い。
(玉井) 地球の生態系に対する人間の生活の影響を評価する学問が必要だと思う。
(阿部先生) 種が滅んで何が悪い。それはセンチメンタルだ。
(学生1) センチメンタルでいい。
(阿部先生) 種を保護するには、我々が犠牲を払わなければならない。
(小宮山先生) 熱帯林の研究者が、すべての種を保存するのは無理であり、役に立つもの、見ていいもの、その他、を保存するのがいいと言っていた。
(北脇先生) WHOでも種の保存について激論があった。たくさんの種がいればいいと言う意見には一致している。ただ、病気の撲滅も種の絶滅である。種を保存するのは、それが将来役に立つかもしれないからだ。今、いいと思うことをするしかない。
地球環境問題は明日のことを考えているが、現実にはすでにPPE(Polution, Poverty, Energy)の問題が発生している。ここで、先進国は「手遅れになったら困る」と、途上国は「今が大事」と考え、南北に大きな溝を作っている。
(畑) 環境問題は横と縦から成っている。縦は「既存の学問」であり、横は「それを結びつける学問」である。縦軸の研究をしている人は多い。その人たちからデータをもらい、それを総合的に判断し、解決すべきだと思う。
(安田) 専門家同志のディスカッションは増えるだろうが、専門家のプライドなどが邪魔をし、よい解決ができないだろう。だから、それをまとめる人がいる。その人はすべての分野を知ってなければいけないが、それは無理だ。一人一人がいろんな分野をかじるのがいいと思う。
(学生3) 政治家が変わるのがよい。
(小宮山先生) ジェネラリストの養成という意見には、相当同意する。人間は専門化して生きた。今その体制が問われている。「広く浅く」ではダメだが、「深すぎて他が見えなく」てもダメだ。その妥協点として、一つの分野を深く理解した上で、手を広げていく、というのがよい。ジェネラルの分かるスペシャリストを目指すべきだ。
(北脇先生) T字型人間はよい。海外では職員を他の分野の印に生かせる制度があり、日本にもそういう動きがある。
(司会) 政策転換にも問題がある。
(松原先生) 私は理科出身だが、社会調査などの文系的なことをしている。しかし、理科のことは役立っている。スペシャリストとして尊敬されると、他分野でも発言権がもらえる。犠牲者になるつもりで新分野(環境科学)を伐り開くべきだ。
(山本) さまざまな分野の人が団結してやっているというが、それが見えない。それが、もう少し見えるようにして欲しい。
(沢) 環境問題は全人類の問題であるが、結局は一人一人の問題に帰結する。一人一人が環境問題に目を向けなければ解決しない。
(鍋嶋) 森林破壊について言いたい。実際に目にできないのがいけない。知識などがあってもはっきりしない。環境教育が必要だと思う。知識を教えるだけではなく、体験させる。
(宮田) 私たち学生にはグローバルなことはできないが、ゴミ問題やリサイクルになら取り組める。東京では分別が厳しいが、しっかり分別できていない。大学にあるクリーンボックスもうまく機能していない。こういうことを習慣として個人的にやっていきたい。
(吉田) 一人一人の良識にかかっているが、その良識には違いがある。公共のためと銘打って、強制的にやらせるべきだ。
(三原) ゴミ問題は個人の意識で改善できるという人もいるが、罰金などの導入で、ある程度強制しないといけないだろう。
(小宮山先生) やった方がいいことは多いが、効果について考えることも必要だ。倫理は重要だが、倫理に期待しすぎるのもダメだ。優先順位をつけて対策を行うことが必要である。
(姫野) マスコミを利用し、人々に環境問題を意識させる。すぐ隣の人に自分の考えを伝えるだけでも効果がある。
(中本) 自分のやったことは、結局自分に返ってくる。スパンが長いから、それを考えずに、やってしまう。そういったことをマスコミが示すべきだ。
(八木) 個人の自覚、意識改革が必要だが、個人が動き出してもどうにもならない。政府が動き出さなければならないが、その起爆剤として、個人やグループの動きが必要となってくる。
(司会) 時間も過ぎているので、パネラーの方に一言ずつコメントを頂いて、終わりにしたいと思います。
(阿部先生) 団結していなく喧嘩ばかりしているので、社会的アピールができない。(環境問題よりも)不況が怖く、危機感がない。
(山下さんの紹介) 環境問題は諸君の問題だ。
(松原先生) 一人一人の意識ではうまくいかない。今の日本でも、景気、成長が最大の問題となっている。今世紀中はこの状態が続くだろう。環境問題を意識すると、マイナス成長になる。成長が落ちることに慣れなければならない。また、今後は、理系の人が社会科学(法学、マクロ経済、統計など)も分からなければならない。
(北脇先生) 環境問題は、宗教ではなく、科学である。両者の違いは、自分がよいともってやるだけでは宗教で、どうしてよいのかと考えるのが科学である。政治家は票になることをやり、企業は金になることをやる。いいか悪いかは、自分で判断しなければならない。また、マスコミの意見と、専門家、省庁の意見が対立することもある。
(小宮山先生) 若い人の直感力が世の中を動かす。直感力を大事にして欲しい。マスコミや政治は、他の感覚(お金、権力など)で動いている。科学者の政治グループもできつつある。何をして欲しいというのではなく、自分からやって欲しい。
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