講義内容(本講義)
捕鯨計画のデータをつくるにあたって
どのくらい、いるか?が重要になってくる
→船上から2時間にどれだけ見えるかでデータ
南極大陸
クジラ
赤道海域 ― 南極海
繁殖 成長
breeding feeding(オキアミを食べる)
南極海に戻ってくる時点で調査
南極海で調査 ぎりぎりの所まで大陸に近づく
調査船の動き方
以前経度方向直進と緯度方向直進を組み合わせた階段状の動き
しかし、それでは、2度目の調査で、
緯度方向直進の部分は、1度目と違うところを通るが、
経度方向直進の部分は、2度目と同じ所を通ってしまい、
場所によって、当たる確率が変わってきてしまう
現在ジグザグ上に動くことで、どの部分も同じ確率で当たるようにした
資源量 N^=nA/(2wL)
n:=発見数、w:船からの垂直距離、L:航行距離
→クジラの生息数 生息数のデータ
但し全数調査ではないので、95%信頼区間を使う
(会議では、この区間最小値を使用)
系群ごとに生息地を知る必要
系群構造を知る必要 しかし、海には境界がないので知るのは難しい
捕獲調査
緯度、経度によって、雌雄比、成熟度が違う
(高緯度ほど、雌が多く、成熟度が上がる)
→大人の雌が南極大陸まで来ていることが分かった……breedingのため
日本近海
クジラを遺伝子で分類 1型と2型
東シナ海では1型:2型=8:2くらい
太平洋では1型:2型=3:7くらい
日本近海、通年では1型:2型=4:6くらい
同じ海域でも、1型と2型の混ざり具合が季節変動している
→東シナ海からの系群と太平洋からの系群が、回遊の過程で、
その場所を別々の季節に回遊していることが分かる
科学小委員会でさえもpoliticalになってきている
「第3者的立場だと、生活に関わらないので
どうしても歯の浮いたような抽象論になってしまう」
国内でも、漁業は決して明るくない
1年ごとの統計でも、漁業人口は、着実に減ってきている
漁家の生活を見て、管理方式を考えていきたい
漁協に出かけてみた
(10県のうち、その県の全体像がつかめるような37組合→優良漁協が多い)
(全国で、2,000組合程度の漁協がある)
漁協の収入……ほとんどが、セリにかける手数料(魚の値段の5〜10%)
ゆえに、漁協職員数は、組合員数の5〜10%でないといけない
(農協と違う点)
(漁協職員と組合員は運命共同体)
大体、1漁協あたり150人程度しか組合員はいない
漁協組合員(漁家)は、自分の漁協・漁協職員に対して強い不満
(漁家は、自営業、晴れたらいつでも漁に出て行かないと厳しい)
(一方、職員はサラリーマン、定休を作ろうと提案することも)
両者では、生活スタイルが異なってくる
遊子漁協(ゆす、愛媛県)の例
鰯を獲っている 数で稼ぐ漁業
戦後、船の大型化 → よく獲れた
昭和30年半ば、激減 乱獲が原因か?
→ 実は運命的なものだった
過去から、鰯の量は30年周期程度で、増減している
(鱗から、年齢別資源量を産出して得られた知見)
→ 政府からの借金を返せず、倒産(昭和35年)
昭和38年頃 真珠の養殖を始める(始めは4人、そのうちの1人は、現在の組合長)
昭和40年頃 ハマチの養殖も始める
ともに大成功、また、鰯がダメだったこともあり、他の漁家もこちらに流れてきた
真珠の養殖は、1回、密殖からメタンガスが発生し、母貝(アコヤガイ)が全滅
→ 1年間収入無しに
そこで、湾を仕切って、それぞれの家庭に区画を割り当て、投入する資源量を決めた
計画性
平等性重視、しかも家計簿も提出させた しかし漁家からの不満はなし
同時に、主婦の間で、石鹸運動(石鹸を買わないようにしようという運動)が起こる
石鹸で、湾が汚染され、魚がダメになってしまうから
皆がまとまりを持っている証拠
漁業人口30万人の声は届かない 環境に一番接している一次産業なのに
しかし、これからは届くようになるだろう(後述)
環境問題を肌で感じている 掟を破ったら1年間収入なし
私達には、それがない
環境問題 私達は加害者になっていることは十分ある
その時、身になって(肌で感じる立場になって)考える必要がある
まだ、できていません。しばらくお待ち下さい。
- (学生)
- 授業中にやったP−Yグラフについてもう少し聞かせて欲しい
- (P:親の数、Y:出産数)
- (岸野先生)
- logisticmodelでは、dP/dt=rP{1-(P/K)^2}となる
それに基づいて、P−ΔP/Pグラフを書けば、右下がりの直線になる
さらに、そこからP−Yグラフを書けば、P=0、Kを両端とする、上に凸の放物線となる
ここで、Kを環境収容量(Carryingcapacity)という
クジラを始め、多くの生物では、P−ΔP/Pグラフが若干、下に凸となっており、
そのため、P−Yグラフの放物線も、P=0、Kを両端としながら、頂点が右にずれた曲線となる
- (学生)
- 一次産業の声が大きくなると講義中に聞いたが、具体的にはどういうことなのか?
- (岸野先生)
- 釣りを例に挙げると、釣り人は、個々では気にしていなくとも、トータルで見ると、漁業者より多く獲っていることもある
しかし、釣り人が、ここで資源を管理するのは無理
一方、遊漁案内人(漁業者であることも)は、釣り人用の宿、釣り船を保有しており、好漁場に釣り人を連れていく
好漁場で、撒き餌すると、海底に余分な撒き餌が沈み、ヘドロ化、つまり環境破壊を引き起こすこともある
こういうことは、遊漁案内人も気にかけていており、いろいろ対策のための観測を行ったりもしている
現在、一般漁業者は水産庁の管轄、遊漁案内人は運輸省の管轄だが、上記のようなことを防ぐため、将来的には、両者を合わせて、資源の保護をする必要性が出てくるだろう
そのとき、資源の管理ができるのは、日常的に肌で接している一次産業の人でなければできない(同じことは、漁港の管理、また漁業以外にも、林業などで言える)
こういうことを通じて、声が大きくなっていくのでは
- (学生)
- これからの日本の漁業はどうなっていくか教えて欲しい
- (岸野先生)
- 予算、主なものはハードにつぎ込まれているので、地元の土建業を通じて、地元に落ちる
漁協の経営改善には、職員数が5、6人しかいないので、合併という策が考えられるが、付近の漁村は、漁獲をめぐって競争するため、仲がよくなく、困難
また、漁獲は海の環境に左右されるため、年収入±20%でもむしろ安定している方であるが、その収入を安定化させようとして、周囲の漁協と手を結んだところで、自分のところが不況の時は、周囲も不況なので、意味がない
よって、違ったタイプの漁協どうしによるネットワークかが必要だと思う
一方、漁家に目を向けると、漁業人口は、5年で半減してもおかしくないという統計が得られている
人口が減ると、一見一人当たりの漁獲高が増えていいように思われるが、実際にはコミュニティが崩壊してしまう
これに対して、何とかしようと予算を付けているが、難しく、うまくいっていない
また、漁業者の意識は、漁業(未明から夜までの重労働)で精一杯
有機農業のように、マーケットまで手を広げれば、方向性が出てくるのでは
しかし、マーケットに対して、1つの漁協では、安定供給が非常に難しいので、ネットワーク化が望まれる
できたら、自分たち自身で、マーケティングすればよい
また、漁業だけでは魅力がないので、他の事業を導入することも考えられる
例えば、漁村の環境でもできるマリンスポーツとして、潜水が考えられるが、これはスキーなどと違って技術向上というものがないらしいし、家族で行っても楽しいものではないらしい
一方、医薬品開発は有効な事業と考えられる
具体的には、水産物からの薬品抽出であり、医薬関係はかなりの収入が見込めるのでは
さらに、深海底の生物は、医薬品としては、まだ研究されておらず、その調査なども考えられる
こういうことを通して、海をきれいにすることが、自分たちの生活向上につながるような仕組みを求められているのでは、と思うし、実際、そういうふうになればよい
但し、中からは、なかなか組織を変えられないので、外圧も必要
- (学生)
- 日本の漁業が振るわない理由として、上記の他に、輸入魚が安いことも挙げられるのでは?
- (岸野先生)
- まさに、そう
その対策として、水産物の価格を引き上げることが考えられる
これは、国と国のレベルで見るとうまく行かない
しかし、漁業者どうしが手を結べばうまく行く(しかし、世界に点在しているので、漁業者どうしが手を結ぶのは難しい)
日本は厳しい状況に置かれている
輸入価格を高くする仕組みが考えられる
この価格上昇分は、関税という方式ではなく、相手側に還元する方式で
また、漁協についての話だが、漁協がネットワーク化すれば、初期投資のリスクも負える
- (学生)
- 価格を上げるしくみは具体的にはどうするのか
また、価格を上げると、現地の人たちが食べられない値段になってしまうのでは
- (岸野先生)
- 値が張るもの(エビなど)は、現地では食べていない(輸出用)
その水産物の価格を上げてしまえばよい(現地で高価格だけではなく、日本から見ても高い価格になるくらいまでに)
そうすれば、少ない漁獲(単位あたりは高価格)で、多くの収入、少なくとも同じ収入が得られる
- (学生)
- そういうような策は、OPECの石油価格引き上げが、抜け駆け増産で終わったように、すぐにダメになるのでは
- (岸野先生)
- かつて、水産庁のスローガンで、沿岸漁業の争いを防ぐために、無尽蔵の遠洋漁業に乗り出そうと行った
しかし、あれほど広い公海でさえ、資源はすぐに減少し、限りある資源であることを、漁業者は認識させられた
エビも限りある資源であり、漁業者もよく認識しているはので、無理に増産しないはずだ
- (学生)
- しかし、当面獲れてしまうというところに、問題がある
- (岸野先生)
- 現地の人もよく分かっている
日本の漁業者自身が、エビ養殖の人たちと提携して、独占的に高く買う(例えば10倍)
要するに、日本側から提案する
そういった漁業者間の取引を何本にも増やす
- (学生)
そういった方式は統制経済なのでは
現在の世の中には逆行している
- (岸野先生)
- 確かに、前述の話では語弊があるかも
- (学生)
- 10倍以下で売るというオプション(いわゆる抜け駆け)を、エビ養殖側は放棄しなければならないが、そういったしくみは有効かも知れない
- (学生)
- 資源価格の高さと供給量の関係は
- (岸野先生)
- 本当に資源が高いのなら、その資源は少なく取り引きされるはず
:ul
(ありません)