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こんにちは、私は環境三四郎の0期生で、現在大学院工学系研究科都市工学専攻博士課程に在籍中の泉 岳樹です。ここでは、私がこれまで行ってきた研究について簡単にご報告しようと思います。この内容に関してご意見・ご感想がある場合にはizumi@ua.t.u-tokyo.ac.jp(注:リンク切れ)にご連絡下さい。また、http://ua.t.u-tokyo.ac.jp/okabelab/izumi/index.html(注:リンク切れ)に、若干ですが関係情報があります。
さて、私の研究内容ですが、卒業論文では、「輸送エネルギーを最小化する国土レベルの人口配置 -環境負荷の低減を目指して-」、修士論文では、「首都機能移転に伴うヒートアイランド発生の予測に関する研究」と題した研究を行い、博士課程では、修士論文の発展と、新たにリモートセンシング(衛星による観測)やGIS(地理情報システム)を駆使した環境解析を行っています。論文にはなっていませんが、日本だけでなく発展途上国での気象観測なども行っています。具体的な内容は最後に説明します。
一体私は、何を思ってこのような研究をしているのでしょう。見る人によっては、私の研究テーマは直接環境問題と関係ないと思われる方もいるでしょう。ただ、私は、環境問題をライフテーマとして生きていくことを自負している人間です。将来的には、研究の内容を活かしながら、日本のどこかで「地域づくり」に身を投じようと思っています。それに当たり、研究対象自体よりも、その対象を扱うために必要なツール(手法)を重視してこれまで研究を行ってきました。
なぜ、この道(工学部都市工学)を選んだか。この企画では、具体的研究内容を説明することを求められており、分量の問題もあるので、ここでは敢えてキーワードだけを挙げておきましょう。さて、いくつのキーワードにピンときますか?
新設学科、カリキュラムのフレキシビリティー、社会との接点、ディシプリン、既存の学問、Tの字、本郷、学生闘争、お金、適性
次に、私がこれまで行ってきた研究の概要をご説明しましょう。ここからは、常体にします。
卒業論文では、日本のエネルギー消費の約1/4を占め、近年も著しい伸びを示している輸送エネルギー消費に着目し、国土レベルの人口再配置による輸送エネルギーの削減可能性について考察した。具体的には、グラビティーモデルにより交通量のモデルを構築し、非線形最適化を行うことにより、輸送エネルギー消費を最小化する人口配置を求めた。その結果、総人口を維持したままでも各地域に適度に人口を分散することによって最大で23%のエネルギー消費削減が見込まれることを明らかとした。
修士論文では、首都機能移転が環境に与える影響、特にヒートアイランド問題に代表される熱環境変化に着目して、その発生の予測を行った。具体的には、気象学の分野で開発され、筆者らが改良を加えたメソスケール気象モデル(CSU-MM)を使用し、首都機能の移転先候補地5ヶ所を対象として、移転前後での熱環境変化を予測した。また、熱環境変化の2大要因である地表面被覆の改変と人工排熱の寄与度についても検討を加えた。
その結果、首都機能移転を行った場合、@どの候補地でも気温が上昇することが見込まれ、日平均で0.5℃-1.0℃であること、A候補地の立地によって影響が異り、特に臨海部に立地した場合、海風により内陸部にまで広く影響が及ぶこと、が明らかとなった。気温が上昇する原因の寄与度分析では、B日中は地表面被覆改変の影響が非常に大きく、夜間には人工排熱の影響が相対的に大きくなり、C新首都で夜間の人工排熱を抑制することが、気温上昇を抑えることに効果的であることなどを示した。
近年、環境アセスメントにおいては、特定の動植物種等だけでなく、自然環境全体への影響に対する総合的評価が求められている。その一方で、具体的な予測手法はまだ確立されていない。生態系や人間生活の快適性に大きな影響を及ぼす熱環境の変化予測は、このような総合的評価の重要な要素になると考えられる。本研究の意義は、改良したメソスケール気象モデルが、開発に伴う熱環境変化予測に一定の有効性を持つことを明らかにしたことである。その結果、今後の環境アセスメントにおいて熱環境に関する予測や評価を行う技術的可能性が示されたといえよう。
参考文献
泉岳樹・岡部篤行・貞広幸雄・花木啓祐・一ノ瀬俊明(1999):「首都機能移転による熱環境変化の予測」,土木学会環境システム研究,27,pp.171-178.
博士課程に入ってからは、フィールドでの気象観測と共に、以下のような研究を行っています。
近年、ヒートアイランドの緩和を目指し、気象モデルを利用した数値シミュレーションによるヒートアイランドの再現や予測、それに基づく政策の検討などが行われている。筆者らの研究を含め既往のシミュレーション研究では、衛星リモートセンシングから推定したアルベドを利用している。しかし、衛星リモートセンシングによる都市域の地表面アルベドの算出は、地面や屋上などの水平面に落ちる日影の影響を強く受け、地表面アルベドを過小評価する可能性があるとの指摘がなされている。
そこで、本研究では、@高分解能の衛星データからのアルベドの算出、A実際の建物形状データから日影の計算、を行い両者の比較を行った。その結果、衛星データから算出された都市域のアルベドが、@建物による日影の影響を受けること、A高層ビル街区に代表される低建蔽率かつ高容積率な地域で低くなること、などを明らかとした。
参考文献
泉岳樹・岡部篤行・貞広幸雄・平野勇二郎:「建物による日影が衛星リモートセンシングデータから算出された都市域のアルベドへ及ぼす影響」,GIS−理論と応用−,投稿中.
以上、簡単に私の研究内容について、まとめてみました。
最後に、「環境問題はどこで学べるか」と思って悩んでいる人へ、現在のところ環境問題を直接学問的に押さえ、総論、各論共にバランスよく学べる場は、恐らく日本、いや世界にも無いのではないかと思います。逆に、自分の問題意識さえしっかりしていれば、どのような場所(分野)でも、学ぶべきことはあり、また、これから切り開かなければならないことがあると思います。これに加え、「多様性に対する深い認識」「様々な矛盾に耐えうる精神」(私が環境問題をライフワークとする際の必要条件だと思っていること、十分条件というのはないと思っています)を持てる人が増え、相互に有機的な関係を築けたとき、そこに、21世紀に必要とされる新たなパラダイムが生まれてくるのだと思います。
「環境問題はトレンドか」「環境保護論者は偽善者か」本当のことを私たちは知りたい
この秋、今までにない環境サークル「環境三四郎」がスタートする。
活動コンセプトは自主学習と行動の一体化。自主ゼミでは環境派一辺倒に陥らない多様な視点を養いたい。また、今秋全国の80大学で一斉に行われる「全国大学環境調査」への参加をきっかけに、よりエコロジカルなキャンパスを目指してアクションを起こしていく。
「気づき、行動する」これこそが社会変革への第一歩だ。一人では何もできない。「仲間」は学内にもいるはずだ。「環境三四郎」は彼らの集える場でありたい。彼らが小さな一歩を踏み出せる場でありたい。
──求む 環境派!─────
これは、1993年10月23日(冬学期の開講日)に、「環境三四郎」を起ち上げたときのビラの文章です。この文章は今でも生きていますか? 求む 環境派! 共に、次世代のパラダイムを築いていこうではありませんか。