三郎と四郎のつぶやき


第4回
ダイオキシンってどんなもの?ばっくなんばー

 1998年の秋の調査プロジェクトで環境三四郎は所沢のダイオキシンを調べました。「所沢」「ダイオキシン」を選んだ理由は、問題がメディアを通してクローズアップされていたことや、自分たちが出したごみがその後誰にどういう影響を及ぼしているのかという問題意識があったからです。
 このような事実を発信することが私たちにできることだと考え、調査の結果を1998年の東京大学の学園祭「駒場祭」で市民運動の方を招いて講演会を開きました。


所沢のダイオキシン問題
ダイオキシンってどんなもの? 三郎・・三郎  四郎・・四郎
三郎

 昔さ、所沢のダイオキシンがテレビとかで問題になったよね。

四郎

 うん。4年ぐらい前かな。興味があるの?

三郎

 あるんだけど、そもそもダイオキシンってどんなものかもよく知らないんだよね。よく「人間が作ったもっとも毒性の強い化学物質」とかは聞いたりするんだけど・・・。

四郎

 ダイオキシンっていうのはいろいろ種類があるんだよ。

三郎

 えっ!そうなの?

基本となる骨格
ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDD)の基本となる骨格
四郎

 正式名称はポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDD)で、この基本となる骨格についている塩素の数、位置でいろいろなものに分けられるんだ。これにPCDF、コプラナPCBといったものをあわせたものをまとめて「ダイオキシン類」っていうんだよ。少しの量でも毒性が強いんだよ。

三郎

 へー。そうなんだ。少しの量でもってどれくらいなの。

四郎

 ダイオキシンの単位にはpgTEQってのが使われるんだ。pg(ピコグラム)っていうのは1兆分の1グラムのことで、TEQっていうのはダイオキシン類の中でもっとも毒性の強い2,3,7,8TCDDと比べてどれくらい毒性が強いのかをあらわした値なんだ。ダイオキシンも種類によって毒性が違うんだよ。

2.3.7.8-TCDD
2.3.7.8-TCDD
2.3.7.8-TCDD
三郎

 1兆分の1グラム!?そんな単位を使ってるってことはすごいちょっとだけでも危険なんだね。

四郎

 実はダイオキシンっていうのは、ごみの焼却とかによっても発生してしまうから、今ではいたるところにあって、すごくちょっとだけど、三郎も毎日体の中に入っているんだよ。

三郎

 えっほんとに!そんな身近にダイオキシンってあるんだ・・・。


ほんとにダイオキシンが原因?
三郎

 ダイオキシンを多く摂取しちゃうとどういうことが起こるの?

四郎

 歴史的な経緯を見てみると、1962年から1971年にかけて行われたベトナム戦争で使われた枯葉剤に混入していたダイオキシンが原因で、現地住民にガン、奇形とかいろんな機能障害が発生したってことがあるらしいよ。

三郎

 そうなんだ。じゃあ所沢でも何か影響が出たんだ。

四郎

 うーん。それがビミョーなんだよ。環境三四郎の調査「所沢のダイオキシン問題」を見てみるとダイオキシンと新生児の死亡率との間にははっきりと関係があるとはいえないんだ。

所沢のダイオキシン問題
所沢のダイオキシン問題
三郎

 えっ、そうなの。今回は意外なことが多いなー。

四郎

 もともと所沢のダイオキシン汚染は所沢の「クヌギ山」っていう雑木林地帯に乱立してる産業廃棄物の焼却場が原因だと見られているんだ。その近くに住む人たちが体の不調を訴えたり、クヌギ山のアカマツが集団で枯れてたりするらしいんだ。

三郎

 じゃあダイオキシンが原因でしょ。

四郎

 産業廃棄物処理場はダイオキシンだけじゃなくて、いろんな化学物質を出しているんだ。だからダイオキシンやあるひとつの物質が原因なわけじゃなくて、それらの物質がいろいろ複合的に作用して健康被害が出たりアカマツが枯れたりしてるのかもしれない。現時点でははっきり決着のつかないことが多いんだよ。

三郎

 そうなんだ。俺てっきりダイオキシンだけが問題だと思っていたよ。


よくわかんないから早期の対策を
三郎

 こういうことってさ、結局どこが問題でどうすればいいの?

四郎

 いくつかあると思う。まずさ、三郎もダイオキシンのことちゃんと知らなかったよね。

三郎のダイオキシンのイメージ
三郎

 うん。まだちゃんとはわかってないと思う。口で説明されただけじゃね、なんか「そうなんだ」って感じしかしないから。

四郎

 ダイオキシンっていうのは、少量でも影響が出るし空間的に散らばっているから、因果関係の把握がしにくいんだ。
 それに加えて体に蓄積したあとで影響が出たり、次世代の子どもに影響が出るとかっていうふうに、影響が出るまでに時間差があったりするから、因果関係がはっきりした頃には手後れになっているかもしれない。

三郎

 だからもっと人の感性に訴えていかないとだめだと俺は思うよ。

四郎

 感性ももちろん重要だけど、それと同時に統計的な情報や科学的な説明もつけないといけないね。それからできるだけ早期の対策が必要だね。

三郎

 このはなしって第2回の「環境学」のときに見た「因果関係が複雑」ってことと関係してるね。


「被害者と加害者」?
三郎

 ダイオキシンがどういうものかっていうのを説明するのも大事だけど、ダイオキシンを出している処理場をどうにかするほうがいいと思うんだけど。早期の対策ってことでさ。

四郎

 たしかにそうだね。ダイオキシンが原因かどうかははっきりとはわからないけど処理場の近くにすんでいる人は明らかに被害者で影響がでてるんだからなにか対策をしないといけないよね。それに産業廃棄物処理業者には煙の発生源なんだから、これもどうにかしないといけないと思うよ。

三郎

 ねっ。そうでしょ。

四郎

 そうなんだけど、処理場で処理しているごみはもとをたどると僕らの生活から出るものとかになっちゃうじゃん。てことは僕らは加害者でもあり、被害者でもあるわけだよ。

三郎

 うーん、そうか。ダイオキシンの毒をこわがるばかりじゃなくて、ごみを出さないようにとか分別をちゃんとするように、まず自分の生活を見直さなきゃいけないなあ。

被害者と加害者は完全には分けれない
四郎

 それから、農家の人たちはダイオキシン汚染の可能性のある作物を出荷するという、ある意味加害者なわけだけど、それを好きでやってるわけじゃないしさ。それにマスコミに報道されたために野菜がぜんぜん売れなくなったんだから、被害者でもあるよね。だから単純に被害者と加害者を分けて考えることができないんだよ。

三郎

 そうか。やめたくてもやめれないっていう話は第3回の「割り箸」の話とも似てたりするね。

四郎

 そうだね。だから、誰がどんな被害にあうのかしっかり分析して、弱者が苦しまないようなやり方で対策することが大事だと思うよ。その他の問題についても報告書には載っていたよ。

現場に行こう!!
三郎

 この報告書を読んでから実際に現場にいってみようかな

四郎

 そうそう。本を読んだりしてもわかんないことはたくさんあるし、「問題は現場で起こってる」って言うしね。報告書のあとがきにも実際現場にいってすごい体験をしたっていう話が載っていたし、僕もいってみようかな。