東京大学の学部・学科紹介

環境三四郎の学部後期過程生、院生や社会人が、自分のいた(研究室ではなく)学科では環境問題に対してどのようなアプローチができるかを紹介します。

工学部都市工学科

都市工学科は1962年に発足した、工学部の中では新しい学科の一つである。都市工学科が設立された背景には、戦後日本の急激な経済発展の中で都市問題や公害問題が重要な問題として認識されるようになったということがある。

現在、都市工学科には都市計画コースと都市環境工学コースという2つの学科があり、それぞれ都市問題や環境問題の解決に向けて取り組んでいる。都市計画コースには都市計画、都市デザイン、住宅・都市解析、都市情報・安全システム、国際都市・地域計画、都市交通計画の6つの研究室があり、都市について様々な観点からアプローチを行なっている。一方、都市環境工学コースは、衛生工学コースとして誕生し、その後時代の変遷に応じて、その研究内容を広げてきた。水供給や廃水処理、廃棄物管理といった分野を中心に、近年では地球温暖化や土壌・地下水汚染といった種々の環境問題にも取り組んでいる。

カリキュラムはコース別の演習を中心とし、残りを計画、環境両コースの講義が占めている。また、都市問題、環境問題は、経済、法律、社会、歴史など様々な分野と密接な関係があることから、学生の関心や意欲に応じて他学部聴講や輪講を行なうことができる。

以上のように都市工学科は、工学部に属してはいるものの、都市問題、環境問題を解決するために幅広い分野からのアプローチを念頭においている。そして何より都市工学科の歴史は日本の公害問題、環境問題の歴史でもある。したがって、環境問題を学ぶ上でまさに適している学科の一つであるといえるだろう。興味のある方は都市工学科のホームページ等でその詳細や研究についても調べてほしい。

農学部3類

農学部3類は、森林に関わる自然科学や社会科学など様々なアプローチから学ぶ学際色豊かな学科である。1学年は25名前後で、学科内には9つの研究室がある。本学科の一番の特徴は、広大な面積を持つ大学付属演習林で行う実習にある。北海道、秩父、千葉、愛知等にある演習林をフィールドに、植林や間伐、植物・昆虫採集、林業機械の操作、砂防ダムの見学など様々な実習が行われ、森林・林業に関わる一通りの体験をすることになる。実習は3〜5泊で行われ、どの実習でも毎晩必ずといっていいくらいお酒が出ることになっている。植えてから収穫するまでが数十年という長いスパンを持つ林業を相手にしているためか、農学部の中でも特にのんびり、のびのびしている学科といえるかもしれない。なお進路は、約9割が大学院修士課程に進学するが、その後の就職先は製紙会社や林業関連会社をはじめ、行政や民間研究職、さらには専門とは関係しない就職など人それぞれである。

かつては「林業」一色であった本学科でも、「環境」や「森林」というキーワードが目立つようになり、テーマも多様化している。森を身近に感じながら森やそこに住む人々を相手に研究したい人にとっては興味の持てるテーマがいくつも転がっている学科なのでおすすめしたい。

教養学部後期過程文系(広域科学科人文地理科)

「人文地理って何?」とよく訊かれるけれど、私のような修行中の身に、これほど答えにくい質問はない。私の浅はかな理解によれば、ある空間的まとまりの中で人間が生活している、その生活を支えるしくみを解明しようとするならば、わりと何でも地理って云えちゃうんじゃないだろうか。

地球上での人間の生活のあり方が環境問題を生み出している以上、もちろん環境問題と密接に関係している(べき)学問だけれど、正面切って環境問題に取り組んだ研究は今のところあまり見当たらない。ということは、地理の世界で環境問題とまともに取っ組み合ったら、開拓者になれるかも!?研究で名を挙げたい駒場生諸君に、ぜひとも志してほしい道である(下手な勧誘みたいになってしまい申し訳ありません)。

具体的にどのように研究を進めるかといえば、基本は現場と机との行き来だ。現場では、見て、歩いて、人と会って話を聴く。こうして得たものを机に持ち帰り、既存の文献や統計資料などとつき合わせてみて考えて、もっと現場の情報がほしくなればまた行ってみる。そんななかで、その地域の生活のなりたちの全体像を、なるべく生のかたちで解明していこう…というようなことをやっている。

最後に、人文地理の魅力はというと…フィールドワークと称して好きなところに旅をし、その土地の旨いものに舌鼓を打てるというのがやはり一番。そうそう、地理に欠かせないアイテムと言えば「地図」だが、救いようのない方向オンチだった私も人文地理に進学後、少しはましになってきた…というのは気のせいだろうか。

教養学部後期過程文系(相関社会科学科相関社会科学分科)

相関社会科学とは簡単に言えば、「従来の学問領域では解決することが難しい問題(例えば環境問題や情報化社会の問題、公共政策など)に対し、従来の学問領域を超えて学ぶことで解決策を見出そうとする学問」ということであろうか。そのためカリキュラムも多様性に富んでおり、法・政治・経済・社会学などの社会科学と言われる学問の基礎は一通り学ぶことが出来る。また、授業数に対して学生数が少なく、多くの授業はゼミ形式で行われるため、授業の緊張感は高い(が、慣れればそうでもない)。

相関社会科学分科の学生数は少なく、新四年生10名、新三年生6名である。同じ学科内の国際関係論分科の授業をとる人も多く、それこそ幅広い学習が出来るであろう。

環境関連の授業で言えば、三四郎の顧問である後藤先生の「環境経済論(環境国際関係)」、テーマ講義でお世話になっている丸山先生の「環境社会科学」「環境社会科学演習」をはじめ、「環境法研究」「地球環境論」などさまざまな講義が開講されている。

相関社会科学分科は幅広く学べるところであるが、それは裏を返せば自分の核となるものがないと消化不良に終わってしまうところである。また語学12単位が必修なので、私のように語学が大の苦手だと大変苦労をする・・・。

経済学部

経済学部は経済学科と経営学科から構成されている。学部生は1学年三百数十人、構成比率はおよそ経済学科:経営学科=6:4となっている。

理系の学部のような「研究室」という単位はないものの、ほとんどの学生は3,4年次の2年間、同一のゼミに所属しており、ゼミの親密度はなかなか高いのではないかと思われる。

授業は他学部と比較すると、大人数の「マスプロ」形式が多い。このような形式なので、当然のことながら、授業にほとんど出てこない人もいて、試験前の「しけプリ」依存度も、法学部にはおそらく及ばないものの(?)、かなり高い(残念ながら「しけプリ」回収は行われていない…)。

卒業後はほとんどの人が就職する。就職先は金融・商社・製造業などの民間企業から官公庁、そして会計事務所(公認会計士)などが多い。私のような院進学者は10%未満であり、「おまえ『入院』するのか」と皮肉られることもあるとかないとか。

環境経済学研究に関しては、現状では手薄であると言わざるを得ないだろう。環境経済学を専門にしている教官はまだおらず、「環境経済学」という授業も開講されていない。ただし、環境経済学にも関心を持って研究している教官は何名かおり、彼らの講義の一部では環境問題を扱っている。また、来年には「環境経済学」という講義が開講されるという情報もあるので、興味のある方はチェックしてみてはどうだろう。

薬学部

当学部では、ヒトの健康を考える上での基礎となるライフサイエンスの研究が幅広く行われている。扱う対象も低分子化合物から哺乳動物の個体まであり、学内の生命科学研究の一拠点となっている。

「薬学」と聞くと、「くすりの研究」をイメージされることが多いと思う。しかし、学部での研究は実際の新薬開発よりも創薬、薬物療法にいたる前座の基礎研究に重きが行われている。従って、有機化学においては、不斉合成(※1)や素反応(※2)の開拓が、生化学においては細胞内情報伝達系、神経系の研究が中心的なテーマであるといえる。

一見すると「環境問題の解決には無縁」にも思えるが、実際には環境に関連する分野でも非常に将来性のある分野だと思う。

例えば、さきほど挙げた有機化学においは、当学部では「水中での有機合成」の研究が進められている。アルコールなどの有機溶媒でなく、水を溶媒として反応を進行できれば環境負荷が大いに軽減されるだろう。また、脂質性メディエーター(※3)としての環境ホルモンの作用機構に関する研究も進められようとしている。

 このように、環境問題への薬学的アプローチは非常に専門色が強く、技術的なものになる。しかし、最近では国立環境研究所が「薬学」という分野から人員(第一種国家公務員)を募集しているように、微生物のバイオテクノロジーや蛋白質・脂質の取り扱いに慣れた人は環境研究の最前線で重宝されると思う。

「将来環境に役立つことをしたいが、統計的アプローチやフィールドワーク、マネージメントなどには興味がない人」、「生命現象や化学反応に興味のある人」にはもってこいの学部だろう。

[注]

(※1)不斉合成:光学活性物質(同じ組成でも立体構造として鏡に映した対照的な形を持つ化合物)を化学合成すること。天然物質のほとんどは光学活性物質であり、合成の際の作り分けることは必要不可欠である。

(※2)素反応:実際に、物理的に生じる反応のことであり、それに対して反応の過程を全体的にあらわす反応は総括反応という。

例えば、水素の燃焼では、実際には水素分子H2が酸素分子O2を衝突して水H2Oが生成するわけではなく、いくつかの中間体を経るので、2H2+O2→2H2Oは燃焼を全体的に表した総括反応であるといえる。

(※3)脂質性メディエーター:刺激によって生理活性を持つようになった様々な油質由来物質の総称。生体の恒常性維持に不可欠で、生体防御、神経伝達など様々な機能を持つ。

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