里山プロジェクト

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活動紹介

2001年1月から、本郷部門で「里山プロジェクト」が動いている。東京都あきる野市の横沢入(よこさわいり)地区にある里山の土地利用問題を追うフィールドワーク形式の活動で、これまでに五回のヒアリング調査(あきる野市役所、地元住民、開発事業者、NGOなど)を行った他、三四郎のメンバー向けに里山の自然と触れ合うイベントを、現地で活動するNGOの協力を得て何度か企画した。2001年12月2日にはカヤネズミの営巣調査にも協力した。【記事:大林潔】

横沢入では、かつて山あいを流れる沢水を利用した水田(谷津田)や背後の雑木林での炭焼きで人々が生活を営んでいた。しかし、谷津田の複雑な地形や日当たりの悪さなどの地理的要因と、石油の普及によって炭焼きが衰退するなどの時代的背景により、高度成長期以降は農業経営の継続が困難になった。そのため、農業従事者から開発を求める声があがり、行政(当時:五日市町、現:あきる野市)は、JR東日本を事業者とする住宅開発の計画を進めてきた。ところが、適度に人の手が入った水辺環境と雑木林に存在する独特の生態系の価値や、江戸時代の石切場や戦時中の防空壕や炭焼きの跡などの歴史文化的価値、人々が自然と触れ合う環境としての価値など、様々な価値を横沢入に見出すNGOが開発計画の中止を求めて活動を展開し、2000年9月に住宅開発は中止されることとなった。以来一年半が経過しようとしているが、現在も、新しい横沢入の土地利用方法のありかたを関係各主体が模索している。以上はこれまでのヒアリングからまとめた横沢入土地利用問題の歴史の概要である。

調査を通じて、横沢入に関する現在の議論の中では、土地利用方法をめぐる重要な概念が曖昧なまま用いられていたり、意思決定や土地の管理に関する役割分担に不明確な部分があったりなど、改善すべき状況が見えてきた。そのような現場にとって「よそ者」かつ「学生」ならではできることを探しながら、プロジェクトは進められている。今後はアンケート調査を行い、ヒアリング調査で得られた問題意識の考察をより深めていく方針である。刻一刻と変化する現場の状況を前に、どれだけ有効な調査を行えるかが知恵の出しどころだ。答えの見えにくい問題であるが、多様な価値観を、どのような場を設定して調整しようとしているのかに私は今後注目してみたいと思う。


2001年1月に始まった里山プロジェクト人と自然の理想的な関係を模索するというコンセプトのもとに集ったメンバーで、プロジェクトを進めてきた。フィールドとして東京都あきる野市の横沢入地区の里山をとりあげ、そこの現状を把握し、大学生という立場で何らかの提言を行うことを目標として活動をしてきた。

「つながり(年2回発行の環境三四郎の広報誌)」でも過去3回に渡って活動を追ってきたこのプロジェクトだが、2002年7月に報告書をまとめ、活動に一応のピリオドを打った。今回はその報告書の内容についてと活動が一段落しての感想を、浦久保雄平さん(7 期:農学部森林環境科学専修)と大林潔さん(7 期:教育学部教育行政学コース)にお話を伺った。(記者:竹内文乃)

ついにまとまった、報告書

A4版、38 ページにわたる報告書は大まかに2 つの軸からなる。1つ目は行政やNGO、土地所有者、地元住民などの関係者にヒアリング調査を行い、それをもとにまとめた「横沢入地区土地利用問題間連年表」と考察。そして2 つ目はヒアリング調査で浮き彫りになった問題についてさらに突っ込んで行ったアンケート調査である。

アンケート調査の質問内容は、里山保全の役割分担についてどのように考えているかということと、横沢入地区内及びその周辺にどのようなインフラストラクチャーが必要と考えているかということの2点である。アンケートの結果、1点目については、現段階では横沢入の土地利用問題全般についての話し合いがバラバラにしかなされていない状況なので、役割分担の明確化を含めた合意形成のためにも情報・意見交換のための場が必要であるということが浮かび上がってきた。

2点目のインフラストラクチャーについては、種類別に賛否に差があったが、環境破壊につながるから駐車場は不用とする意見がある一方、保護地域内に車を立ち入らせないために駐車場が必要という意見があるなど、根底として里山の保全を願っていても違う結論に達している状態がまま見うけられた。

報告書はインタビューした人などを中心に関係者に配布すると共に、市民団体の会合に参加をして発表する機会も得られた。関係者からはインパクトがあった、地元住民や女性の視点が欠けているなど様々な反響があった。

メンバーが4年生中心ということで、この報告書をもって一段落した里山プロジェクトだが、横沢入の里山保全問題は今後も続いていく。関係者から望まれている話し合いの場は未だ実現を見ず、土地の利用方法は開発中止から2 年余り経った現在でも目途が立っていない。しかし、市民団体による地道な活動が功を奏して、いくつかの小学校が自然を学ぶ体験学習の一環として横沢入を訪れているなど、土地の有効利用にとって前進の兆しも見え始めている。

活動が一段落しての感想として、浦久保さんは「それまでは大学構内で活動していたけれど、横沢入の調査を通じて様々な人に出会い、社会を見ることができたのが良かった。この調査で得たことを自分の研究にも役立てていきたい。」と語る。また、大林さんは調査の進め方に関して「ミーティングは月に一度か二度、現地へ足を運ぶのも、時間のある人が月一回ほどという形で、無理のないペースでできたのが良かったと思う。」と話している。

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