2008年度駒場小学校

第1回(2008年5月13日)

授業のねらい

テーマ「ビオトープってなあに?」

・子供たちに「ビオトープとは何か」を理解してもらう

私たちの立場では、【生き物が暮らすいろいろな形の自然】をビオトープの定義として伝えようとしました。(学校ビオトープはあくまでも「ビオトープの一つの形」)

・小学校のビオトープを再生し守るために何をすればよいかを児童に知ってもらう

「日本固有の種が多様に生息すること」を目標とし、現地での観察・作業を通じて、外来種を入れないことや草や石・積み枝等を適度に管理することの必要性を伝えようとしました。


授業計画

以下のような計画を立てました。
【晴天時】:2コマの授業を1コマずつ作業と授業にあてる。
【雨天時】:1コマ目に2クラス同時に大教室で授業、2コマ目に「こんなビオトープにしたい」のワークシートに絵を描いてもらい、予定していた整備の実施は、環境三四郎が後日行う。


授業実施

当日朝までの雨の影響で、「雨天時」形式で授業を実施しました。1コマ目の合同授業で今回の授業テーマについて伝え、2コマ目のワークシート作成時に授業の復習と達成度の確認を行いました。

1コマ目の授業用スライドを事前に準備していき、各パート作成者の代表一人が説明を行いました。原稿等は特に用意せず、説明者がその場で子供たちの反応を見ながら話を進めました。45分間の授業に飽きないよう、アニメーション・イラスト・音声をふんだんに取り入れたり、随所にクイズを挟んだり、といった工夫を施しました。導入の授業なので、子供たちを適度に盛り上げてビオトープに対する関心を持ってもらうことを重要視しました。

2コマ目のワークシートもこちらから準備していき、駒場小学校のビオトープの模式図上に呼びたい生き物の絵や名前、生き物の住みかとなる物・場所を書き込んでもらった。みずプロメンバー全員が児童の間を見て回り、全員と会話をするよう心がけた。 授業時間内で整備を実施できなかったので、後日環境三四郎メンバーで整備を実施しました。


反省・今後の注意点

講義中・ワークシート記入中の様子を見る限り、ビオトープやその中に住む生き物に対する興味は充分に持ってもらえたように感じられました。ただし、クイズや問いかけ調の語り口・過度のアニメーション等を挟んだ際に騒がしくなりがちで、そうしたときに本当にこちらが伝えたいポイントが伝わりづらくなっている可能性があることを忘れてはいけないのでしょう。実際には聞くべきポイントをきちんと聞いてもらえたようではあります(記録者談)。また、後方に座る子供たちまで巻き込めているか注意する必要がありましたが、質問に答えてもらう際に後方の子供たちをあてたり、後方にみずプロメンバーがついたりすることである程度対処できたように思われました。

クイズへの回答状況を見ると、ビオトープの定義や管理方法などについて大枠は理解できていたと考えられました。ただ、ワークシート記入状況を見ると、金魚や錦鯉を「呼びたい生き物」に入れている児童も見受けられたので、具体的にどの生き物は日本固有のものなのか、といった部分は今後の授業で伝えることを目指していきたいです。

また、今回は整備を一緒に行えなかったので、座学での知識しか得られていない点が以後の不安材料となりました。


第2回(2008年7月15日)

授業のねらい

テーマ「ビオトープを観察しよう」

・前回と今回の授業で学んだことを踏まえ、実際にビオトープを観察する

スライドでビオトープの導入部分を学んでもらった前回の授業に引き続き、特にビオトープに生息する生き物について、ビオトープにいてもいいのか、ビオトープでの役割は何かなど、より詳しく学んでもらいたいと考えました。同時に前回と今回の授業で学んだことを踏まえ、実際にビオトープを観察することで、授業で学んだことを自らの目で確認してもらいたいと考えました。


授業計画

以下のような計画を立てました。

授業とビオトープ観察をそれぞれ1コマずつとしまして、2つのクラスが1コマごとに交替する形で行いました。授業→観察の順で行う1組は「授業で学んだことを実際にビオトープで確かめてみよう」、観察→授業の順で行う2組は「ビオトープで観察できた生き物は実際にどのような役割があるのか、授業で学ぼう」という流れで行っていこうと考えました。


授業実施

1.授業

授業では最初に前回の復習を踏まえたごく簡単なクイズを行い、その後パワーポイントのスライドを利用して、ビオトープに関する生き物について学習してもらいました。扱った生き物は前回授業で子供たちに書いてもらった「ビオトープに来てほしい生き物」を参考にしており、その中でも人気の高かった、カエル・魚・カタツムリ・タニシ・ザリガニ・カメ・ダンゴムシ・ミミズ・トンボ・ホタルの10種類を取り上げた。これらに関して、「ビオトープにいてもいいのか」「ビオトープでの役割は何か」「生き物の基本的生態」などを説明しました。

2.観察

実際にビオトープに行き、どのような生き物がいるかを観察してもらいました。今回の授業では扱わなかった植物について、観察の場で簡単に触れました。同時に周辺の草抜きを行い、ビオトープ整備の一環とするとともに、どの草を抜くべきかについても考えてもらいました。


反省・今後の注意点

パワーポイントの使用や、外での観察といった、児童に興味を持ってもらうための「面白い」授業を行おうとした試みは、概ね成功したように思えました。ただしアニメーションが多かったパワーポイントや普段の授業と異なる外での授業のため、若干騒がしくなる場面も多かったです。パワーポイントに関してはプロジェクターにつながらないというアクシデントがあったため、時間の遅れや授業の騒がしさにつながってしまったことは否めませんが、伝えるべきことを伝えられないという事態だけは今後避けていきたいです。また子供たちによって知識や興味に温度差があり、特にある程度の自由が許される屋外での観察では、興味関心の薄い児童も少なからず見受けられました。このような子供たちにどのように接するか、今後考えていきたいです。


第3回(2008年11月27日)

授業のねらい

テーマ「冬の生き物を探そう」、「落ち葉の循環」

・学校外(駒場野公園)と自然とのつながりを感じ、自然とふれあう

生き物がいないように見える冬でも実は生き物が隠れていること、また、落ち葉堆肥の説明を行うことで自然の循環について知ることができるようにしました。そして、3月に行われる授業で作成する「ビオトープに来てほしい生き物図鑑」につながるようにしました。


授業計画

以下のように2つのコース(約20分)を用意しました。1つ目は「生き物探しコース」で、落ち葉の下や木のうろに冬の間隠れている生き物の観察を行うもの、2つ目は「堆肥コース」で、落ち葉の堆肥ボックス・その堆肥を利用した畑を順に見学して、自然の循環について学べるようにするものです。また、生ごみから堆肥を作成する機械の見学も計画しました。当日は子供たちに駒場野公園に集合してもらい、授業時間の冒頭に当日実施する作業の説明をした後、クラスごとにそれぞれのコースを交互に回りました。


授業実施

当日雨が降っていたため、児童たちはカッパを着用しての実施となりました。「生き物探しコース」では、自然観察舎*の穴田さんに対応していただき、駒場野公園で最も大きな木の下で、落ち葉の下や木のうろに隠れている生き物の調査を行いました。また、自然観察舎では、冬眠する亀やカマキリの卵の写真を用意していただき、説明をしていただきました。以上のように、色々な形で冬を越す生き物がいることを伝えることができました。

一方、「堆肥コース」では、こまばリサイクルの会*の上田さんらに対応していただき、落ち葉堆肥のボックスやその堆肥を使って栽培を行っている畑を見学しました。そして、落ち葉・堆肥ボックス・畑の順に自然の循環が行われていることを説明しました。また、こまばリサイクルの会の方が設置した「りぼんちゃん」(生ごみを堆肥にする機械)の説明をしていただきました。


反省・今後の注意点

当日は天気が悪かったため、天気によって変更がきくように前もって話を進めておくようにしておく必要がありました。また、移動時間等に思ったより時間がかかり、特に堆肥のコースのほうは詰め込みすぎたように感じられました。

自分たちが本気で生き物探しをすると子供たちもついてきてくれますが、子供たちの側に立ち一緒にがんばって取り組むか、先生側に立ち大人として子供たちを注意するかの役割分担を明確にするべきでした。また、今回はほぼ全員が興味を示して生き物探しをしていましたが、興味の薄そうな子供がいた場合の対応(積極的に話しかける等)も重要になると考えられます。その点において、子供との接し方に慣れている団体から教わることもしていければと思います。また、観察舎の方やリサイクルの会の方など、他団体の方とも今後もつながりを活かしていきたいです。


*自然観察舎…駒場野公園の自然観察やボランティア活動の場で、常駐の解説員がいます。

*こまばリサイクルの会…目黒区駒場にある循環型社会を目指す団体です。


第4回(2009年3月12日)

授業のねらい

テーマ「これまでの授業の成果を発表する」

・子供たちに生き物図鑑を作ってもらう

1年間の授業を通して、ビオトープについての知識やビオトープから学べることを伝えてきました。また、実際にビオトープや自然に触れてもらうことで、ビオトープのみならず自然や環境そのものにも興味を持ってもらうことができたと思います。そこで、その最後のまとめとして、子供たちにビオトープに関する生き物図鑑を作ってもらいました。総合学習にふさわしく、自分たちで考え作るという観点から1年間を締めくくることができます。また、今の4年生が次の4年生(現3年生)に引き継ぐ資料という意味で、学校ビオトープを子供たちの手によって学年を越えて維持するためのリレーのバトンとしての授業でもあります。


授業計画

最終授業での発表の前に、項目ごとに班分けをし、発表の準備を行います。ビオトープに来てほしい生き物やいてはいけない生き物、季節ごとの植物や動物について、項目ごとに班分けをし、各班でインターネットや図鑑などを調べながら、A5サイズの画用紙にまとめていきます。

当日は、授業参観という形で保護者の方々に見てもらうことになっていたこともあり、授業前の昼休みを使って、先生主導のもとでリハーサルが行われました。授業での発表は、調べたことを紙芝居風にまとめた画用紙をOHPシートに映し出しながら、子供たち自身に発表してもらいました。


授業実施

みずプロメンバーは今回、見学という形で1年間の締めくくりに立ち会いました。保護者の方やみずプロメンバーに発表を見てもらうということで、リハーサルにはかなり力が入っていました。

発表内容のまとめ方に関しては、1枚1枚の画用紙に書ききれないほどの情報を盛り込んで、できるだけたくさんのことを伝えたい、少しでもわかったことを披露したいという熱意がひしひしと伝わってきたところや、発表することということを意識して、文字として書くのは必要最小限の情報だけできれいな絵や図を大きく描いてまとめるところなど、班によって、実にさまざまなまとめ方をしていました。

発表に関しては、班の中でメンバーを交代しながら行われ、練習の甲斐もあって大きな声で発表してくれる子が多かったように思います。人前での発表が苦手な子の発表で声が小さくなる場面も確かにありましたが、発表をしっかり聞きたい一心で子供たちの方から自主的に他の子供を静かにさせるところも見受けられたり、質疑応答のときに、みずプロメンバーでも驚くような鋭い視点からの質問が飛んできたりと、ビオトープの生き物に対する子供たちの関心の高さを改めて感じさせられました。何より、どの班も楽しそうに発表してくれた点が印象的でした。

最後に、私たちの方から一言ずつ、1年間の授業を振り返りながらコメントを述べさせていただき、授業が終了しました。


反省・今後の注意点

・この回の授業に関して

授業の時点では3年生に見てもらうことができず、資料のみの引継ぎとなってしまったので、これをどう次に活かすかを検討する必要があります。また、子供たちのペースで発表させるので、授業時間のやりくりが非常に困難でした。

・これまでの授業の成果について

子供たちの調べ学習において、私たちの授業がどれくらい土台になっているのか、という点については、実際、子供たちが調べてくれた内容の中には、私たちが教えた範囲を超えていたものもあり、一年間授業をやってきたことで子供たちのビオトープや生き物に対しての興味を引き出せたのではないかと感じています。

・全体を通じた教え方について

まず、教える内容に関して、ビオトープに関する知識を私たちの方できちんと習得しておく必要がありました。また、授業を行う際にはビオトープに関する知識はもちろん大切ですが、教え方も重要であると感じました。実際、1年間の授業を通して、教え方の面で先生方の力の大きさを感じ、同じ授業を行う場合でも教え方によって、理解度も子供たちの授業終了後の興味の持ち方も変わってくるので、もっと先生方と情報共有をして教え方のノウハウを学んでいくことができるとよかったと痛感しています。また、教えるという一方的な授業よりも、先生や子供たちみんなで創っていくという体験型・参加型授業の方が、子供たちの知識や興味の定着という点で効果的であるようにも思われるため、これからはそのような授業を増やしていくのもよいと考えられます。